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闇夜の譫言4


やはり、これには心が揺れたらしい。そりゃそうだ、大事な妹だから。僕には親兄弟は無いから解らないが。

「解りませんか?僕たちは若い女性の血が大好きなのですよ。貴方の妹さんなんて、とても美味しそうじゃないですか」

そう。
僕たちの好物は若い女性。
彼よりも妹さんの方が美味しいはずなのだ、普通なら。
しかし、少し見てきたが彼には幾段か匂いの段階で劣っていた。
彼を知らなければ、確実に彼女をターゲットにしただろう。
……まあ、もう少し大人になれば彼よりも美味しくなるかもしれないが。その辺は未来にでも行かなければ解らない。

下唇を噛んで、悔し気にこちらを見る彼に少し笑ってどうしますか、と聞いた。
出来ればこの段階で、OKを貰いたい。最終手段を使えば一発だが、あれは僕は出来る限り彼には使いたくない。
なんとなく、彼には使いたくないのだ。多分彼の有りのままの性格がなんだかんだで気に入っているからだろう。
珍しくも、僕の見た目に騙されない、彼の性格を。

「……妹には、あいつには手を出さないんだよな」
「ええ、勿論。御望みであれば彼女を他の吸血鬼に襲われないように守ることも出来ますよ」

ほら、早く……
早く堕ちて来て下さい。

彼がふと首元を開けて、こちらを見た。

――美味しそう……。

彼がどうしてそこを開けさせたのかとか、そんなこと関係ない。
出来れば今すぐに美味しく頂きたい。甘い匂いにふらりと眩暈さえ起こしてしまう。
恥ずかしいのか、目線を僕から外している姿に食欲ではない欲まで働いてくる。お腹が空いたら理性が弱くなるというのは、どうやら本当のことらしい。

「……早くしろよ」

彼の首に誘われるがままに、そこに唇を近付け、舌を這わす。
その感触にびくびくと震える彼が少し、可愛らしく見えた。……男に向かって可愛らしいなんて、何を血迷ったことを思っているんだろう僕は。

「いただきます」

静かにそう呟き、彼の首に牙をたてた。彼に痛みを余り感じさせないように、優しく。
初体験が痛かったら、やっぱり後々やりたくなくなるでしょうしね。初めくらいは、優しくしてあげたい。

こんなことを思ったのも、彼が初めてだ。僕にとってもいろいろ初めてのことばかりで戸惑ってしまう。
ごくごく飲むと、やはり先程味見したときよりも甘くて美味しかった。

「んっ……ふは…」

血を吸われている感触に感じているのだろう。
優しくすると血を吸う感触は快感を感じると聞いたことがある。
きっと彼も、快感を感じているのだろうと血を吸いながら思う。

入れたとき同様、優しく牙を抜く。抜くとそこは血が滴り、色っぽく見える。
それも無駄にしないように、優しく舐めとった。
舐めながら、上目で彼を見ると顔を紅く染めながら、はぁはぁと艶のある息をはいていた。
……これは、予想外にもいい餌なのかもしれない。

「ご馳走様でした。どうでしたか?」

にっこり微笑んで、彼にそう質問した。あえて牙の跡は残す。
後できちんと消してあげるつもりではあるが、彼に僕が血を吸った跡を見せておきたいと思ったから。

「ふ、はぁ……さい、あ…くだっ!」

思っていた通りの解答。
彼は素直ではない人種だとさっきまでの会話で理解していたので、なんとなくそんな事を言うと思っていた。
……顔を紅に染めて、荒い息を吐きながら、そんなこと言っても説得力ないですよ。

「ココ、こんなにしているのに、ですか?」





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あきゅろす。
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