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嘘の皮3


そう思って唇を強く噛んで声をくぐもらせたのだが、それにいち早く気づいた古泉に唇を噛むのはやめろと言われた。

「貴方の唇に傷が出来ると涼宮さんが心配するでしょう、そんなのもわからないんですか」

ああやっぱり、ハルヒの為か。
一瞬でももしかして古泉……と思った俺が馬鹿だった。俺のことなんて結局ハルヒの……神の“鍵”程度にしか思っていないんだろう。俺は古泉にとってそれ以上でもそれ以下でもない、ただそれだけの価値しかない。
ある意味で言えば古泉にとってかけがえのない、代わりのいない存在かもしれないが、それは俺が望んでいる存在とは違う。
だって俺は古泉ともっと違う……いわゆる恋人同士になりたいのに、古泉は俺とそんな関係になりたくはないだろう、一生。
良くも悪くも、古泉にとっての俺は……そうだ。

「ほら、後片付けしますよ。もう一局お付き合い……願いますね?」
「わか…った」

のろのろと後片付けして古泉がきつめの視線を俺に投げ掛けたのは言うまでもない。

「そうですね、次の試合が終わるまでには一度イった方がいいでしょう。良かったらコレ、お使い下さい」

そう言って投げられたのは、古泉のハンカチだった。
丁寧に折り畳まれた青色のハンカチ。それを先走りで汚れた左手で掴み、自分自身に添え扱く。

「ふ、ァ……あ、」
「さぁ、試合開始と致しましょうか。負けたら罰ゲームですよ」

古泉が何と言ったかも上手く理解できない程に無我夢中で自身を扱いていた。
のだが、沈黙は肯定と見做したのか特に何か言われる事はなかった。






試合結果は言うまでもないな、惨敗だ。しかも最後古泉が「僕の勝ちですね」とにっこり顔で言った所で盛大にイっちまった。
もう一生俺はまともな道を歩めそうにはないなとそこで把握した。
残念ながら俺はどうやらただの変態だったようだ。

「さて、僕が勝ちましたので一つだけ罰ゲームを」
「罰ゲーム、だと……?」

一体何をやらされるのだろうか、俺は。
その時の古泉の顔が余りにも、余りにも何か企んでいる時の顔……というよりも黒い表情で、怖かった。

「ええ、約束したでしょう?負けたら罰ゲームだと……」

古泉からしたら今のこの状態が罰ゲームに近いものだし、それならば俺はその何が何だか未だにわからない罰ゲームとやらを甘んじて受けてやろう。そう思ったのだ。

そう、ここでそんな事を思わなかったら俺はまだ……シアワセだったのかもしれない。

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