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猫の恩返し3


「はい、着きましたよー」


結局、一時間半古泉に耳と尻尾を弄られ続けた。
着いた頃にはぐったりと疲れこんでしまった。
なんか、この一時間半で失ってしまったものが沢山あるように思える。
何故か古泉に擦り寄ってしまうわ、尻尾を古泉に巻きつけてしまうわ散々だ。
これも猫の生態だと言うなら、俺はもう一生猫になりたくない。


「ええと、まずは朝食といきますか!」
「え?ああ……そうだな……」


部屋に着くなり今まで見たことない笑顔でそう聞かれ、ぐったりしたまま答えた。
そして出されたものは、まあ……わかるわな、魚だ。いや、正確にはご飯と魚と味噌汁だったのだが。
古泉は何故か栄養調節食品群のほら…有名な、あれだ。黄色いパッケージの四本セットだか二本セットだかがある、あれ。
それを食べていた。


「お前は朝食それだけか?」
「え、ああ…そうですね。朝はどうしても食欲がなくて……」
「ふーん」


まあ、色々な体質とかがあるし、あれああ見えてかなりカロリー高いし、大丈夫だろ。
そう思って、とりあえず味噌汁を啜ると普段ならそんなに感じない筈なのに火傷しそうなほど熱くて、うっかりそのままぼとりと味噌汁茶碗を落としてしまった。


「〜〜〜〜〜〜熱っ!!!!!」
「ど、どうしたんですか?!」


落としてしまったことでズボンがずぶ濡れになってまるで粗相をしてしまったようになり、気分は更に低空飛行となった。
しかし、ズボンから染みてくる温度を見る限り、そんなひりひりした痛みが来るほど熱いわけでもないらしい。
そのままぼんやりしていると、濡れタオルを持ってきた古泉が大急ぎで俺のズボンを脱がし、太ももをそれでごしごしと拭きだした。
茶碗を落としたこと、怒られると思ったら全然怒っていない様子で、それよりも心配してくれているようだった。


「火傷してしまったら大変ですからね……っ!」
「その、悪かった……な。あと、自分で拭けるからもう良いぞ」
「いえ、僕の作った味噌汁がかかってしまったので僕が責任を持って拭きます!」


止めようと思っても止まらない古泉に、はぁ…と溜め息が漏れる。
いや、そうじゃなくって…これ、ぶっかかったの太ももだけじゃないから言ってるんだがな。
そうするに下着にも掛かってしまっているわけで……そこまで言えばわかるな。
そんな場所を古泉に拭かれるとか無理だ!いや、誰に拭かれても無理だ!!!
今はまだ古泉は太ももを拭くことで夢中でそれに気付いていないが、もし気付いたとして「こちらも僕が責任持って…」とかそんなことになってみろ。
俺、もう婿に行けないぞ。


太ももをようやく拭き終わった古泉は、あろうことか俺の下着部分で目が停まった。
あ、やな予感的中したかも。


「……えーっと、下着の替え用意してきます」


一応奴にも常識はあったらしい。




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