[携帯モード] [URL送信]
猫の恩返し1


朝起きたら、猫耳と尻尾が生えていた。
そんな経験をしたことがある人間がこの世に居るだろうか、いや居ないだろう。
普通居はしない、というか居てはいけない。まず有り得ない。
そう、有り得ないんだよ普通に考えて。


それがどうして俺には降りかかってるんだ?
これもハルヒの力か?ああもういい加減にしてくれよ。


俺は自宅のベッドの上で項垂れた。
いや、項垂れている場合じゃない。
こんな場面、我が妹に見られたら俺は飛び降りて死ねる。
兄の威厳がなくなるとかそういうんじゃなくて、これが兄の趣味だと勘違いされるのが物凄く嫌だ。
とりあえず俺は長門に電話することにした。
長門なら、どうにかしてくれる――そう信じて。












「状況は理解した、でも私にはそれを無くすことは出来ない」


状況を掻い摘んで説明しても長門は理解してくれた。がしかし、長門にもこれを無くすことは出来ないらしい。
幸い今日は日曜日だから学校に行かなくて構わないが、家にも居られないし俺は一体どうすれば良いんだー!!!


「古泉一樹に匿ってもらうといい。私から既に連絡済み。もうすぐ来る」
「は?いやなんでこいず……」


――ガラッ


「おはようございます、いやぁ爽やかな朝ですねぇ」


あろうことか、古泉は窓から侵入してきた。
その笑顔は爽やかそのものだが、今の俺にはその爽やかさえもうんざりした気持ちには勝てない。
しかも土足で俺の部屋に入ってきているのだ。
ここは海外じゃないんだ、日本なんだ、ジャパンなんだ!土足で部屋に入っちゃいけません!
ま、そんなことはどうでもいい。
どうして俺が古泉に匿ってもらわなければならないんだ、長門ん家じゃ駄目なのか?


「今日は涼宮ハルヒと朝比奈みくるが家に来る。よって古泉一樹に頼るしかない。ファイト」
「……という訳です。そうとわかればいざ行かん古泉宅へ!」


俺はまたもや項垂れた。
見ろ、耳までもぺったりしてるぞ。ああ、もうヤダ。こんな生活嫌だ。
今なら紐無しバンジーさえ出来そうな気がする。


というよりもまだ着替えていなかったので大急ぎでジャージに着替え(何故ジャージかと言うのはツッコまないでくれ。尻尾のせいだ)、帽子を深く被って誰にも見つからないように家を出た。
両親のことだ、俺が朝から姿見せてなくても不審には思わないだろう。


……あとで一応連絡くらいは入れておこうと思うが。





次→
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!