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囚われた鎖27


「ごめんね、騒がれたら困るから。君をうちのボスが気に入っちゃったみたいで……二、三日付き合ってくれるかな?」

二、三日……俺には学校もあるし、明日も遊ぶ約束したから無理だ!そう思って首をふるふると左右に振った。
お兄さんは暫く何か考えている風だったが、俺の顔を見てまたにっこり笑い、「だったら無理矢理連れていかなきゃかな……、嫌だなぁ、平和主義者なのに」と言った後、首裏に一発手刀を入れた。

気絶する少し前にごめんねと謝っているお兄さんが見えた。



「ん……っ!!」

目覚めるとそこは俺の部屋ではなかった。
どこか豪華ホテルの高い部屋のようなベッドに寝かされていた。
俺、こんな部屋見たことない……ベッドもこんな広いの初めて見た!

連れてかれた、とかそんなのを考えるよりも先に見たこともない部屋への好奇心を隠せなかった。

ベッドの上でバフバフ飛んでみたり、ごろごろ転がってみたり、無意味に歩き回ったり。
普段は年齢より落ち着いて見える、と言われる俺だったが、やはり歳相応に新しいものに対しては興味津々だ。

「ふかふかだし、ひろーい!」

このまま家族四人で寝られそうだなー、と考えたとき思い出した。
俺は誘拐された、ってこと。
キョロキョロ回りを見回しても誰もいない。
どうやらお兄さん含め誘拐犯はこの部屋には今はいないみたいだな、逃げるなら今のうちだ!
俺はドアへと全力疾走した。
がちゃ、とドアを開けるとやはりホテルの中だったらしく廊下の先にエレベーターが見えた。
急いでそこに向かい、駆けて行った。

「早く、早く……っ!」

上がってくるエレベーターが待ち切れない。早くこんな所から脱出して、早く家に帰りたい!
チン、と漸く到着したエレベーターにホッと息をついたが、エレベーターには誰かが乗っていたみたいですぐに乗り込むことは出来ない。
スーツを着ているお兄さんが俺を見るなり腕を引っ張って元居た部屋に引きずり込まれた。

「や、やだ……!俺、帰るっ」
「それは聞けないんだ、ごめんね。ボスに気に入られたのが不運だったね」
「いや、だぁ……」

家に帰りたい、とぐずり出した俺にお兄さんは「早く帰りたいなら抵抗しないほうがいいよ、家族大事だよね?」と言った。
どうもそのボスとやらが抵抗されたら抵抗しただけ燃えるという根っからサドらしい。
そして、俺が逃げ出したら家族諸とも大変なことをされる、と。
だから俺はじっと何をされても耐えなきゃダメだと教えられた。

何よりも家族が大事だ。まだ小さい妹もいることだし、俺一人で家族が無事ならそれに越したことはない。
大人しくなった俺を見て、お兄さんは偉いねと言って、頭を撫でてくれた。
それが凄く気持ち良くて、お兄さんに身を傾けて甘えるように擦り寄っていっていた。
この寂しい空間の中で甘えさせてくれる人間が欲しかったから。

「……ボスが気に入った理由がわかったかも」

お兄さんはそのまま頭を撫で続けてくれて、俺はそれが心地よくてつい、寝てしまった。
だからお兄さんが呟いたその台詞も聞こえなかった。



「……から、ま……いと」
「…に、て……とい…の…」

気がつくと、会話声が聞こえてきた。
片方はお兄さんの声でもう片方は聞いたことのない声だった。
起きようかとも考えたけれど、どうも不穏な空気だと思ったので寝たふりを続けることにした。
どうやら会話は隣の部屋でしているらしい。

「ですから僕は、彼にはまだ早過ぎると思います」
「くどい!我に盾突くな。おまえは唯の部下で、替わりは幾らでも居るのだぞ」

ドアが開いている為、隣の部屋の声は筒抜けだ。
会話の内容がよくわからないけど、多分お兄さんのいう彼は俺のことだろうなと思った。





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