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囚われた鎖25


これ以上古泉と二人きりなんて心臓に悪すぎる。
こんな、胸がドキドキ言うなんて俺どこか悪くなったのか?
流石に三日の睡眠時間が三時間なのが(正確には一日で三時間だが)いけなかったのか……。
ああもうどれでもないことは知ってるからいちいちツッコんでくれるな!

ガラッ

「は、はぁ……も、入っていいぞ」
「…う、うん。わかっ、たよ」

あれ、部長さんなんか息がちょっと乱れるような……。
俺も人のことは言えないけど、絶対乱れてる。
そして部長さんの後ろで会長が小さく「チッ」って舌打ちしていた気がする。
…………もしかしなくても、お邪魔だったか?

そう思っても開けてしまった扉を閉めるわけにはいかないし、時間は戻らない。
時をかける列車なら戻ってくれるだろうが……って、違う!
とりあえず医務室に入らなければ話は始まらない。
ちょっと苛々してた会長を、部長さんがどうにか宥めてくれたおかげで幾分か機嫌が良くなったことだし。

「古泉君、具合はどうかな?」
「そうですね、最高です」
「それは機嫌がだろ。こいつはお前の怪我の具合とか聞いてんだよ」

古泉がにへらーと笑い、会長がしかめっつらで会話している。
俺は何を言えばいいのかわからなくて、壁にもたれていることしか出来ない。
部長さんが質問して、古泉が阿呆な解答をして、それを会長がツッコむ。
途中からツッコむのに疲れたのか、溜息をついて俺の横にもたれる会長が何だか不憫に思えてきた。
正論って、言っても通用しない相手がいるんだなとしみじみ思った。

「お疲れ様です、会長」
「あいつ、マジでどうしようもねぇな。ま、あいつの歳ならあんなもんで十分か」

そういえば、古泉の歳を俺は知らないな。
俺より三つ位は年上かな。そうだとしたら十九か。
うん、それくらいな気がする。もっと上かもしれんが、最低十九だろう。
ちらり、と横の会長や古泉に質問を律義にしている部長さんを見る。
会長は古泉と同じくらい、ってでもタバコ吸ってるし二十歳くらいか。部長さんは……うーん、十七とか十八とかそのあたりっぽいな。

「俺とあいつの年齢は想像に任せるさ。古泉の歳は…そうだな、本人に聞いてみろ。驚くからな」

にやり、と笑って俺の顎を持ち上げると古泉が「あーーーっ!」と声をあげた。
一体なんだ、会長は面白がって遊んでるだけだぞ。だから人に向かって指差すのをやめなさい!
というよりも古泉さん、貴方何時からそんなキャラになったんですか。
俺の知ってる古泉はもっと格好いいぞ。
お前もしかして頭どっか怪我したのか。それとも精神的になにかあったのか。

「そんなことより会長は、彼から離れてくださいーっ!」
「だーかーらー、からかってるだけだっつってんだろ。見てわからねぇのか」
「貴方こそ何言ってるんですか、僕に焼き餅焼かせたいんですか、泣かせますよ」

はぁ、どーにもならん。
最初の余裕古泉はいずこに。
会長はといえばさっきから笑いを堪えている。これはまたとないレア映像だろう。面白い。
部長さんは、我関せずの姿勢を取るつもりなのか黙々とカルテになにかを書き込んでいる。つもりなのだろうが、その手が少し震えているのを見て、嫉妬していることがわかった。

俺から会長へ止めるよう頼み、古泉に近寄って「怪我はどうなんだ」と聞くと「今から走っても運動しても大事ありません」と返ってきた。
よし、それを聞いて安心した。
俺は古泉の手を掴むとそのまま医務室を出、古泉の部屋へと向かった。

「あ、あの……どこに、」
「お前の部屋に決まってんだろ。聞きたいことがあるし言いたいことも沢山あんだよ」





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あきゅろす。
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