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囚われた鎖19


食事は軽食だった。
昼も食べられるようにと考えてくれたらしい。
もぐもぐと食べながら、古泉を見るとにこにこしながら俺を見ていた。

「美味しいですか?」
「おう、食うか?」

食べていたパスタをフォークに絡め、そのまま古泉に差し出すとちょっと照れた顔をしてその後ぱくりと口にした。

何で少し照れたのだろうか。そんな変なことはしてない筈なんだが。

「あーん、が出来るなんて思ってもみませんでした」

あ、俺もしかしてまた妹にする時の癖が出た、のか?
顔に血が集まっているのがわかる。暑い。

真っ赤になった俺を見て、無意識にやったのだとわかった古泉は俺からフォークを奪い取り、さっき俺がやったことをやった。
ご丁寧に「はい、あーん、ですよ」とか言いながら。

…………まあ、食事に非はないから食べたけど。






「さて、食後の運動でもしましょうか」
「食後すぐに運動すると逆に身体には悪いんだが」
「まあ良いじゃないですか」

では行きましょうと手を引かれ、連れて来られた先は、色々なスポーツ用品の置かれた部屋だった。
なんだ、普通の運動か。
てっきり運動の意味が違うのではないかと身構えていたんだが……。

ホッと、胸を撫で下ろすとそれに気付いたのか古泉は俺を後ろから抱きしめ、首に指を這わせもう片方の手は腰に回してきた。
そのまま耳元へ唇を持って行き、ちゅっと音を立ててキスしてきた。

「ふふ、真っ赤になって……可愛いですね」

古泉は鏡に映った俺を真っすぐ見ながら、耳元で囁く。
前を見ると真っ赤な顔をした俺と目があった。
そのまま見ていると、にこりと笑った古泉と鏡越しに目が合い、恥ずかしくなって目を伏せる。

な、なんだこの妙なドキドキというか、胸の苦しくなるような気持ちは。
いやいや違う、これは別に古泉に対してのドキドキとかではなく、いきなり古泉が抱き着いてきたから驚いただけだ。
そんなまさか……なぁ?

「ここで貴方を犯すのもいいかもしれませんね」
「は、はぁ?何言ってるんだ嫌だぞ俺はこんなとこ」

ヤるならベッドがいい、と思ってしまった自分に自己嫌悪。
だからなんでいちいち変なこと考えてしまうのだろうか。
ここで鏡プレイしている俺と古泉のことなんて、考えなくてもいいのに頭の中で勝手に進んでいく。止まらない。

あの時の記憶がまざまざと蘇ってきて首を振って気を紛らわす。
あいつと古泉は、違う。別人だ、だから思い出すな。

「冗談ですよ、そんな顔はさせたくなかったんですがね」

古泉は俺から離れ、申し訳なさそうな顔をする。
古泉のせいじゃないのに、どうして古泉にそんな顔させてしまうんだろう。

「……おまえのせいじゃない、ちょっと嫌な事を思い出しただけだ」

そう、ただちょっと嫌な事を思い出しただけ。

「トレーニング、しようか」

そう古泉に笑いかけたが、上手く笑えてなかったのか古泉は難しい顔をしていた。
それでも頷いてくれたのは、多分優しいから俺の話したくない過去と関係があるのだと気付いてくれたから。





トレーニングと言っても、俺はランニングマシーンで走っているだけだ。
変に鍛えるより、体力をつけた方が良いと気付いたから。
古泉はさっきからずっとサンドバックに向かって攻撃している。
攻撃、って言うか、ボクシングの練習しているみたいな感じだ。
ただ、物凄く八つ当たりしているように見えるが……気のせいだよな、多分。





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