囚われた鎖18
見事地面に着地。
ちょっと裸足だったから痛むが、まあ大したことはないだろう。
そのまま玄関の外へ出、ハルヒを降ろす。
「このまま帰れ、俺なら大丈夫だから」
「何でよ?あの男がそんなに大事なの?あいつは悪魔なのよ、あんたの過去だって、あいつと同じ……」
「言うなっ!」
わかってるさ、わかってる。
だけど俺は、古泉を放ってはおけないんだ。
あいつと俺は少し所じゃなく似ている。
あいつが悪魔なら、俺も悪魔だよ。
そのまま、ハルヒから離れて玄関を閉める。
閉める直前、「キョンのバカ!」と叫んでいたが、閉めたら何も聞こえなくなった。
ごめんな、ハルヒ。
俺はまだここから出るわけにはいかないんだ。
「涼宮さんが来られたそうですね」
「ああ、さっき帰した所だ」
屋敷内に入り、一番に古泉に話し掛けられる。
壁にもたれ掛かり、見物者を決め込んでいるなんて、本当に物好きな奴だよな。
つかつかと俺に歩み寄ったかと思えば、ひざまつき、右足を持ち上げられる。
そしてそのままぐっと力を込められた。
「――――痛ッ!」
「やっぱり、着地の際に少し捻りましたね。歩き方が不自然でしたからまさかとは思いましたが……」
近くの部下に救急箱を取りに行かせると、古泉はいきなり俺をお姫様抱っこしてきた。
じたばた暴れて落とされるのも溜まったもんじゃない、と思い大人しく腕の中にいてやることにした。
そのままふわりと柔らかいベッドの上に降ろされる。
一階から七階まで移動はエレベーターではあるが、姫抱っこされっ放しなのはちょっと悔しい。
「貴方が飛び降りたと聞いたときにはヒヤッとしましたよ」
余り心配かけさせないでください、と古泉は言うがそもそも飛び降りなきゃいけない事態を作ったのは古泉、お前のせいだろう。
古泉はキョトンとした顔で俺を見て、首を傾げている。
まさかこいつ、部下がハルヒを攻撃したこと知らないのか?
……いや、まさかそんなこと。
「古泉、ハルヒにおまえの部下がしたこと知ってるよな」
「何かしたんですか?僕はただ、貴方を逃がさないように言っただけなんですけど……」
どうやら知らないらしい。
ハルヒに対してやった危険値大好調の行いを正確に伝えてやろうと思ったが、先程古泉に頼まれていた部下が救急箱を持ってきたため言うのは辞めておいた。
足に湿布を貼り、そのうえから包帯をぐるぐると巻いて、最後にそこにキスを一つ落とすと古泉はまた向かいに座った。
そして先程会話の途中だったことの先を俺に促した。
俺は古泉の部下がハルヒを殺そうとしたこと、そのためついうっかり怪我させてしまったことをあるがまま伝えた。
「すみません、後で処罰しておきますので」
「いや、結局そっちが怪我しただけでハルヒにも何ともないし、気にするな」
あの部下をたかがそんなことで処罰されるのは御免だね。
結局一番怪我したのあの部下だし、ハルヒも俺も特に何かあった訳じゃない。
古泉は俺の右足をじっと見つめていたが、何も言ってこないためそのまま納得してくれたんだと思う。
「それより腹が減った。何か食べる物くれ」
今は午前十時過ぎ。
遅すぎる朝食、早過ぎる昼食と行こうじゃないか。
俺は腹減ってるんだよ。
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