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安心と心配


「世界は崩壊しないんだ」

彼は僕の腕の中で、そう呟いた。例え涼宮ハルヒに関係がばれようとも、世界崩壊の危機は皆無だと。

「そうでしょうか、僕もそうなら良いとは思いますが……」
「ハルヒの心の揺れなんて、もう関係ないんだよ」
「どうしてですか」

優しく頬を撫で、聞いた。
これで「ハルヒがそんなことで世界崩壊なぞする訳無い」とか「俺はハルヒを信じてる」とか言われたらどうすれば良いだろうか。
ちょっと妬けてしまう。
でも、涼宮さんの心の揺れを心配しなくて良いとはどういう意味だろうか。

「俺が、神だから」

そう彼は寂しげに言った。
彼が神?
いつから?どこから?
頬を撫でていた手を止め、彼を見る。
彼はしっかりとこちらを見据え、寂しそうに笑った。

「この間、大規模な閉鎖空間が生まれただろ」
「え、あ……はい。勝手に消滅しましたが」

一週間程前、別に不機嫌も見受けられなかったにも関わらず突如現れた巨大な神人。それもそれが大量に。
僕たちは戦ったけれどひとつひとつが普段の二倍も三倍もしぶとくて、中々倒れてくれなかった。
体力の限界を迎える仲間を気遣いながら、戦っていたのだが僕に三体の神人が襲い掛かってきたその時、閉鎖空間は消滅したのだ。
それがどうしたと言うのだろうか。

「あの時、ハルヒから俺へと力が移動したんだ。あの閉鎖空間は移動時の弊害というか……まあそんな感じで」

ごめんな、と謝る彼なのだが僕はまだ呆気にとられていて、何が何やらわからない。
え、じゃあそれから一切閉鎖空間に駆り出されなくなったのは、神が変わったから?
でもそんなこと、機関から何も聞いていない。
機関ならもうそれくらいの情報知っていてもおかしくないのに。

「機関はまだ気付いてないさ、情報統合思念体は気付いてるかもしれんが……、俺からお前には一番に伝えたかった」

そう言って、彼から軽くキスをされたが反応は出来なかった。
この唇が、身体が、神?
キョンくんが、神?

「心配しなくとも、もう閉鎖空間は現れないさ。俺が現させない。じゃ、俺帰るな」
「……貴方が例え神でも貴方は貴方です」

ごちゃごちゃな頭の中、それだけを彼に伝える。
服を着ていた彼を後ろから抱きしめる。
神だろうが人間だろうが、彼は彼だ。
それ以外の何者でもない。

「どんな貴方でも貴方が好きです、だから今日は帰らないで」

今帰すと彼が一生帰ってこない気がして、抱きしめる腕に力を込めた。
顔は見えなかったが、小さく頷き、僕に身体を預けてくれた彼と再びベッドへと倒れ込んだ。






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