冬予定
「お前、冬休み何か予定あるか?」
帰り道、彼が振り返って言った言葉に驚いた。
それは彼なりの、不器用なお誘いの言葉だったからだ。
即答で「ありません」と断言したかったが、特進クラスの為か補習時間が半端なく多い。
「補習で26日までは毎日通常通り授業がありまして、一月に入ってからも二日ほど模試が入っている以外の予定はありませんね」
今ならこの時間割を振り分けた先生さえも恨めるかもしれない。
朝から晩まで、寧ろ朝から朝まで彼と一緒に居たいのに、それが許されないなんて。
二週間ある冬休みの一週間も彼と一緒の場所に居られないなんて悔しい。
「あー……そっか。お前仮にも特進だもんな。課題手伝ってもらいたかったんだが、それなら無理だよな」
課題は建前に過ぎないだろう。
その証拠に、先程から目が泳いでいる。
嘘をつくとき、彼は面白いほど目が泳ぐ。
「昼は無理ですが夜ならその間も幾らでも空いていますよ、心も、身体も」
「バッ!誰もお前ん家泊まるだなんて言ってないんだからな……っ!!」
二度目の驚き。
まだ僕からお泊りの誘いもしていないのに、泊まる気だったのか、彼は。
嬉しくてニヤニヤしていると真っ赤な顔で彼は僕の胸をドンッ、と叩いた。地味に痛い。
「……っ!何でもない!ニヤニヤすんじゃねぇよバカッ!!」
照れたようにそう言ってずんずんと早足で進んでいく彼は耳までも真っ赤で笑った。
補習なんて行きたくないけれど、その帰りを彼が待ってくれるなら良いかもしれない。
追いかけながら、そう思った。
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