人の名前で遊ぶべからず
大の男――並みの“大の男”よりかなり大きい――が、二人向かい合ってホシャフをかじりながら濃く煮だした茶をすする姿を、ジラは茶のおかわりを用意しながら眺めていた。
やがて、クバードが、ぽつりと呟く。
「ダリューンってよ、なんか擬音語みたいな名前だよな。殴るときとか、走るときの効果音にぴったりじゃねえか?」
それに、シャプールが反論する。
「何を言うか。床に擦ったイモをこぼして転ぶときの様子を表した言葉の方がぴったりだ」
すぐに二人の間の空気は険悪になる。
「いやそれはおかしいだろ! イモを零すってなんだその限られた設定は!」
「なんだと! おまえは走るときダリューンと音がするのか!?」
ガルルルル、と睨みあう二人にジラは溜息をつく。
「よし、多数決だ。おい、ジラ、おれの方の意見に一票だよな? 今度、菓子を買ってやる」
「なにっ、なんと卑怯な! ジラ! おまえ、まさか主を裏切らんだろう!?」
二人に詰め寄られ、ジラはちょっとお茶をこぼしてしまった。ううーん、としばらく首を捻って考え込む。ああ! と言うと、二人はどっちだと血走った眼で先を促した。
「生肉っぽいですよね。生肉噛んだら、ダリューンっていいそうです」
それを聞いて、二人は口々に
「生肉はねえよ」
「生肉なぞ食えるか」
と声を揃えて否定した。
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