現実はときに残酷
最近、クバードとよくつるんでいるようだが、とシャプールに言われ、ジラは目を丸くした。
「つるんでいる、というか、賭場に遊びに行く前に私の手を握っていくのです。そうするとよく勝てるそうで。……いけませんでしたか?」
「いいや、駄目なわけではないが、しかし……」
何事か言いにくそうに眉間に皺を寄せるシャプールに、ジラは首を傾げる。シャプールは何故か顔を赤くして、ああ、ほら、と口ごもりながら言った。
「クバードは女好きだから、気を付けろよ」
そんなことか、とジラは脱力する。
「クバード様は女好きかもしれませんが、女たらしではないでしょう。私、最初に会ったときに“よう、嬢ちゃん、おれのこの逞しい腕に抱かれてギランの海より深い眠りについてみないか”って言われましたよ。上着を脱ぎ捨てながら」
シャプールは黙ったまま眉間の皺を深くした。
「芸人か何かかな、って思いました。まさか万騎長だとは露とも」
ジラが言うと、シャプールは愕然とした表情を浮かべる。こっちがびっくりである。
「……その口説き文句、駄目なのか」
「逆にお聞きしたいのですが、どこに良い点があるのですか」
その台詞を言っているシャプールを想像してみたが、像を結ぶ前に駄目だコリャ感がとんでもなかったのでやめた。
「いや、しかし、それでも、クバードが女をきらしているのを見たことが無いのだが……」
「そりゃ、万騎長って肩書があれば多少のあばたもえくぼですよ」
言ってから、ふと疑問に思う。それなのに、どうしてシャプール様はモテないのだろう。思わず言葉にしかけたが、あまりに惨いので、すんでのところで思いとどまった。
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