ハルの場合
不愛想攻め×意地っ張り受
この世界には番と呼ばれる自分にとって唯一の存在がいる。番の香りはどんな相手でも惹かれずにはいられなくなると言われている。例えどんな相手にでも。
「……はぁ、可愛い。」
「……。」
「はぁ……可愛いなぁ、本当に。」
「……。」
「はぁ、かわ。」
「うるせぇっ!いい加減、黙れよカヅキ。」
無駄に整った顔を惚けさせ艶っぽいため息を零し、番の有無に関わらず周りを赤面させている友人の頭を、ハルは教科書で叩いた。
その瞬間、周りの生徒達も我に返ったように慌てて1時間目の授業の準備を始める。
日頃から真面目で精悍な印象を醸し出していたカヅキが、ここまで変わったのはつい先日の出来事からだ。
「ちょっと、力強すぎだよ。」
「番で馬鹿になったお前の表情筋には丁度いいだろ。」
「……それは俺を羨ましがってるの?」
「アホ。余計にほしくなくなったわ。」
ようやくいつもの表情になったと思ったが、『番』という言葉を出しただけで、またカヅキの雰囲気が甘くなる。
『番なんて別に興味ないよ。出会える確証もないのに、期待するだけ無駄だね。』
自分がどれだけ周りから人気があるか理解した上で、そんな会話を淡々としていたカヅキとは全くの別人だった。
そんな友人を見ているからこそ、ハルは殊更番に対して変な嫌悪感を抱いてしまう。
「つーか、お前、あんな不愛想な奴のどこが可愛いんだよ。」
アキラと名乗る以外何も喋らず、終始カヅキが喋っていた初対面を思い出し、ハルはため息をつく。不愛想な奴を見るたびに、身近な不愛想野郎が脳裏に浮かんでしまう。
「え?そりゃもちろん全部だよ?不愛想でも、俺の前ではちゃんと笑ってくれるから。」
「あっそ。」
「それにね。涙を溜めた目が。」
「もういい、もういい。」
もはや耳にたこができるほど聞いた番の自慢話を避けるように、ハルは机へと伏せた。
「朝から煩いぞ、お前ら。」
「あ、おはよう、ユーグ。」
「……。」
あー、本当、朝から最悪だ。
頭上から降ってきた不機嫌そうな声を聞いて、ハルは更に苛立ちが募る。
「……ハル?」
「放っておけ、カヅキ。こいつは俺のすることが全部気に入らない奴なんだよ。」
「……。」
奥歯を噛みしめながら、額を必死に机へと押さえつける。そうしなければ、いますぐにでもぶん殴りそうだったからだ。
「相変わらず仲悪いね。」
「知るかよ。こいつが勝手にそうしてるだけだ。」
「そういう言葉を選ぶから、ハルが拗ねるんだよ。」
「別にこいつが拗ねても怒っても、俺には関係ないから。」
頭上で交わされる会話に、拳を握りしめる。
だから嫌いなんだ、こいつは。昔から。不愛想で、口も悪くて、いいところなんてない。
「……全く。二人が仲良くなるには番になるしかないみたいだね。」
「っ……ありえねぇよっ!」
「え?ちょっ……ハル?」
カヅキの言葉に耐え切れず、俺は椅子を倒して立ち上がると、入ってきた教師を押しのけて教室を飛び出した。
必死に走って、走って、いつもサボりに使用している音楽準備室へと駆け込む。何故か音楽室から離れた場所に設置されたため、例え音楽の授業があってもここが使用されることはなかった。それに気付いてから、ハルは何かあればここに来ているのだ。
「はぁっ……はっ……く、そっ……はぁっ。」
急に運動したためか、体中から汗が吹き出し、額の汗が首筋を流れていく。乱れる息を必死に整えながら、ハルは体を壁へと預けた。
「お前焦り過ぎ。」
「……っ!」
ハルの吐息しか聞こえないはずの場所で、静かに響いた声にハルは体を強張らせる。
「つーか、昨日あれだけヤったのに、まだ足らねぇのかよ。」
「ち、違……んぁ。」
汗で張り付いた前髪を撫でられ、ハルの体に痺れが走る。ぶわっとジャスミンの香りが準備室内を満たす。
匂いに導かれるように、ハルは目の前の人物へと手を伸ばした。
「ユ、ユーグッ。」
「……ったく。」
ハルの腕を自分の首へと導き、近付いてきた柔らかな唇へとユーグは舌を差し入れる。熱い肉に口内を擦られ、ハルは目に涙を浮かべながら必死にユーグへと縋りついた。
ちゅっ、くちゅ、ぴちゃっ
歯列や口蓋に舌が這わされるたび、ハルは自分の体が震えるのを止められない。堪らなく気持ちいいのだ。
「んぅっ、も、っと……な、かっ。」
頬へ添えられただけのユーグの手を掴み、前は既に見て分かるほど張りつめていたが、ハルは敢えて臀部へと導く。その仕草で、ユーグの手は何の迷いもなくズボンの中へと指を伸ばし、穴へと触れた。
「はぁっ!」
「……ハル、お前……。」
「違っ……違う、ぅっ、ああっ!」
中へと差し込まれる感覚に、ハルはうっとりと目を細める。一方ユーグは普通であれば乾いているそこが、指を一本容易く侵入させるほど濡れている事実に、舌舐めずりしていた。
「何が違う?俺が全部掻き出した後、また自分で濡らしたんだろ?」
「っ、違……あっ、あっ!んんっ。」
違う、と首を振りながらも、指が動きやすいように膝立ちで足を広げるハルに、ユーグは中に入れていた指を乱暴に掻き回す。
グチュッ、ヌチュッ、ヌププッ
「はぁっ、あ、あ、あぁっ!」
「もっと弄ってやるから、脱げ。」
「……っ、くそっ。」
舌打ちするものの、ハルの手はしっかりとベルトを外し、膝までズボンを下ろしていた。下着は既に大きなシミが前にも後ろにもあり、収まりきらない亀頭が見えている。
「……上は?」
指を入れたまま、ユーグが耳元で囁けば、顔を真っ赤にしたハルはシャツの裾を口に咥えた。
ユーグの目の前に現れた胸には、絆創膏が貼り付けられている。ハルにとって、絆創膏は既に必須となっていた。何故なら、シャツに擦れるだけで歩けなくなってしまうくらい感じてしまうから。
「ちゃんと付けてるな。いい子。」
「ふぐっ、んーっ。」
隠された可愛いアレを思い出しながら、ユーグは絆創膏の上から舌を這わせる。それだけの刺激で、ハルは崩れるようにユーグへとしがみ付いた。穴もキュウッと締まり、恐らく前のシミも広がっただろう。
可愛い反応に、ユーグは自分の香りが更に強くなったことを自覚していた。
ズブッ、グチュッ、パンパンパンッ
「ひぃっ、あぁ、あんっ、やあぁっ!」
「嫌な奴のちんこ全部旨そうに食べてるくせに。」
「……っ!」
みっちりと広がったヒダを指でなぞられ、ハルは背を反らして快感を逃す。それでも、持ってろと言われた膝裏は離さない。従順なくせに抵抗を止めないハルに、ユーグは目を細め、腰を奥へと進ませるように叩き付けた。
「あ゛あぁっ!ふが、いっ、だ、めぇっ!」
「駄目じゃないだろ?ここが好きなくせに。」
「ひぃっ、ああっあ、あ、ああっ。」
押し込むと同時に、またハルの腹が白濁で濡れる。
同年代のモノより太く、長い自覚はある。だからこそ、ユーグは自分の番になるものが本当に自分自身を受け入れてくれるのか不安だったが、番となった初日に意識を飛ばしながらもしっかりと奥まで受け入れてたハルに、ユーグは愛しさを感じずにはいられなかった。
可愛く育てた乳首にも舌を這わせてやる。
チュウッ、ペチャッ、ヂュッ
「だめ、や、やぁっ!」
言葉とは裏腹にハルの胸は反らされ、唾液に濡れた乳首が嬉しそうに硬く立ち上がっていた。自然とユーグの体が乳首を求めて密着していく。
「ひっ!奥ぅっ、あっ、んぅっ。」
「ん、そろそろ出る。」
「やぁっ、中は、やだぁっ、な、かっ!」
ぎゅうぎゅうと締め付けて絞り出そうとする動きに、ユーグは息を詰める。嫌だと叫びながら、ハルは脚を支えていた手を離し、汗が流れるユーグの首へと腕を回した。
首筋から香る濃いジャスミンに、うっとりと目を惚けさせる。
パンパンパンッ、ズブブッ
「あっ、あっ、あっ、ひぅっ!」
「……っ、ぐ。」
「っ……さい、あ……く。」
離れぬよう足をユーグの腰に巻き付け、奥に当たる熱い渋きを感じた。この瞬間が堪らなく好きなのだ。
耳元で聞こえる荒い吐息も、ハルに満足感を与えてくれる。
この瞬間こそ、自分達が番だと実感できるときだった。だからこそ、何度も求めてしまうのだ。
「……本当、ユーグってよく耐えるよね。俺、アキラに番を否定されたら……。」
「別に関係ない。アイツと俺が番ってことは変わらないから。」
「でもいつまで隠し続けるつもりかな、ハル。まぁ、バレバレなんだけどね。」
「……カヅキ、お前、分かっててハルを挑発しただろ?」
「ん?何のこと?」
ユーグとカヅキがそんな会話をしている頃、番に満たされたハルは保健室でぐっすりと眠りについていた。
終わり
ハル:十八歳。十六歳で幼馴染だったユーグと番になるが羞恥心が勝ち、周りに公表はできていない。ハルとユーグの友人達は既に気付いている。
ユーグ:十八歳。意地っ張りなハルが幼いころから嫌いだったが、番になってからは羞恥心に勝てないハルが可愛くて仕方がない。
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