リュウの場合C
Bの続編。出産直後。子育て表現あり。(333333リク)
この世界には番と呼ばれる自分にとって唯一の存在がいる。とある日、ルガ国では、新たな王族の誕生に国全体がお祝いムードになっていた。
しかしその一方で、城の中ではやや険悪なムードが漂っていた。その中心は、幸せいっぱいなはずのリュウとカルガだ。
「絶対だめだ。」
「なんで!」
「あいつも王子になる。ここではそれがしきたりだ。」
「っ……カルガの分からず屋!!」
「カ、カルガ様、リュウ様、お、落ち着いて下さいませ……。」
子供を出産したばかりでまだ青白かった顔を怒りで赤く染め、リュウは自分の子供を抱き上げた使用人の服を握りしめた手に力を入れた。
使用人がオロオロと慌てる中、カルガは無表情のままリュウの手を離そうと試みる。
「長時間の出産で疲れているんだ。まずは体を休めろ。」
「それと、俺から離れさせるのとは違うだろっ。」
「あいつには信頼した使用人が付く。問題ない。」
「問題ないわけないっ、俺は……俺は大丈夫だから、連れて行かないで……。」
ついに瞳から涙を滲ませ始めたリュウに、使用人は何度も目を彷徨わせた後、柔らかな肌着に包まれて眠る王子をリュウの腕へと戻した。
「おい。」
「し、しかし……。」
「出産したばかりの体に、何を叫ばせている。」
「あ、ゾフ様……。」
温かな体をギュッと抱きしめるリュウ。使用人を睨んだカルガへ、戒めるような声が響いた。使用人が堪らず安堵の溜息を零す。
「どうした。あまり騒ぐのは良くないぞ。」
「……って、カルガが……俺とこの子を離そうとするからっ。」
「ふむ。カルガ、お前さんは話してなかったのか?」
「……知っていると思っていた。」
「城下では皆、子は親に育てられるものだ。リュウが嫌がるのも当たり前だろう。」
「……。」
普通、番の間でできた子供は最悪の場合を除き、その両親が育てる。リュウももちろん、仲睦まじい両親に育てられてきた。
しかし、この例はあくまで一般的な国民に準ずるもの。ルガ国の王族の番への愛情は子供以上であり、子供に対する愛情はあっても、大切な番との時間を削られることにストレスが堪る。
これは王族、そして王族に仕える使用人のみに伝えられてきたことだが、遥か昔、子供の多かった王が、番と触れ合う機会が少なくなったことに苛立ち、大切な番を傷つけてしまうという事件が起こった。番を傷つけた王は、その事実を受け入れられず、床に伏せ、番が悲しむ中亡くなってしまう。そして、王の死に心を痛めた番が翌朝自害したのだ。
既に成長していた子供達により国の傾きは逃れたが、当時の城内は酷く荒れた。そしてその教訓から、王族の、特に王や王子の子供は、生まれたときから使用人に育てられることとなる。
「というわけだ、リュウ様。カルガも決して子供が嫌いでそうしたわけではない。」
「……そ、そうなのか?この子が嫌いな訳じゃない?」
「嫌いなわけがないだろ。俺のリュウの子だ。」
「そっか……良かった。」
堪えていた涙が次々と流れるリュウの頬をカルガは優しく拭った。
「泣くな。俺の説明不足だ。」
「……。」
「リュウ、顔を上げてくれ。」
「……てたい。」
「ん?どうした。」
優しく頬を撫で続ける指に、リュウは腕の温もりを強く抱きしめると、珍しく不安そうな表情を浮かべたカルガと視線を合わせた。そして、カルガだけでなくまわりの使用人、ゾフが驚く言葉を口にする。
「ふぇっ……。」
「エルガ、起きた?」
ぐずり始めた声が聞こえ、リュウは食事中にも関わらず席を立つ。唇に当てた指をむぐむぐと口にする姿を見て、すぐに使用人にミルクの用意を頼むと、エルガを抱き上げ、柔らかなソファーへと腰を下ろした。
「もうお腹空いたのか。よく食べるなぁ。」
「リュウ様、準備致しました。」
「ありがとう。」
手馴れた仕草でミルクを飲ませる。王子達を育て上げてきた乳母も驚いた、恐ろしい速さでミルクを飲み終える我が子に、笑みがこぼれた。
「可愛いなぁ。」
「リュウ、まだ食事が残っているぞ。」
「あ、カルガ。おかえりなさい。」
「エルガには俺が飲ませる。リュウはしっかり食事をしろ。約束だろう。」
「む…………わ、分かったよ。」
約束、と強調するカルガに、リュウは渋々エルガを預けると、ソファーに座るカルガを見ながら食事をせっせと平らげる。
「リュウ様、そんなに慌てては消化に悪いです。カルガ様もいらっしゃったのですから、ゆっくりお召し上がり下さい。」
「……はい。」
そんなリュウに厳しい言葉で注意するのは、使用人のキシマ。生まれたばかりのエルガを、泣きそうなリュウに渡してしまった彼は、その後の展開に責任を感じているらしく、リュウの子育てをフォローしながらも一際厳しく接してくる。まるで城のお母さんのようだ、とリュウは密かに思っていた。
カルガとの時間は必ず確保すること。
夜は子供から離れ、カルガと眠ること。
子育てを優先しすぎて、自分の体調を崩さないこと。
困ったときは使用人の手を借りること。
どうしても自分の手で子供を育てたいと頑なに離さないリュウに、カルガが絶対順守とした約束だ。
ルガ国の王族の番が自分で子供を育てる、という前代未聞の行動に、言い伝えを知る王族や使用人が心配する中、リュウとカルガは時折喧嘩はするものの、仲睦まじく過ごしていた。
「出るかもしれない、だろ。」
「出なっ……んぁ。」
ギュッと乳首を摘ままれ、リュウは反対の乳首を吸い続けるカルガを抱きしめた。
男同士の番では、子供を人口のミルクで育てる。しかし、ふと、リュウが「やっぱり母乳は出ないようなぁ。」と呟いた夜から、乳首への愛撫が一際粘着質になったのだ。
「っ、も、やだっ。」
チュッ、ヂュゥッ
「んんっ!」
毎日ではないが、頻繁に弄られるようになった乳首は、以前より硬く腫れている。そしてなにより、吸われるだけで、ゾクゾクとした快感が腰に走るのだ。
このままだと本当に、出るかもしれない。
朦朧とした頭で、ぼんやりと思う。
「も、す、わな……でっ……っ、ん。」
「また明日、だな。」
「あぁっ!」
向かい合っていた腰を揺すられ、厭らしい音が零れた。カルガが手を動かす度、グチュグチュと大きな水音が響く。
「あっ、あぁっ、んっ。」
「はぁ……早く入れたい。」
「だ、めっ……ゾ、ゾフがっ……。」
「分かっている。」
出産後、リュウとカルガはゾフからセックスを禁止されていた。またすぐに子供ができるかもしれない、という理由と、出産で緩んだ後ろに物足りず激しく攻める番がいないわけではない、というリュウが真っ赤になった理由からだ。
互いのものに手を重ねて擦り合わせながら、リュウは逞しい肩に額を押し付けた。
「……い、くっ。」
「俺もだ。」
胸いっぱいにミントの香りを吸い込み、絶頂へと導く大きな手に全てを委ねる。少し枯れた低い声と共にカルガの熱い吐息が耳に届き、リュウは果てた。その熱に促され、カルガも精を吐き出す。
「リュウ……愛してる。」
「お、俺も……。」
独占欲の強い年下王子の腕で一層強く抱きしめられながら、リュウは幸せを噛み締めた。
終わり
リク:リュウの子育て編。
はる様、ありがとうございました。
ちなみに、卵はこぶし大で生まれてから数十分で大きくなり、ヒビが入った時点で他者の手で殻を取り除かれます。
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