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ミツの場合
人外攻×訳あり不良受
注:死表現あり。


 この世界には番と呼ばれる自分にとって唯一の存在がいる。殆どは同種族が番となるが、中には異種族間で番となる者も僅かではあるが生まれていた。


「ミツッ!またサボり?いい加減にしないと単位足らなくなるよっ。」
「うっせぇ、デカパイ!」
「なっ!!最低っ。」

 キャンキャン煩い、お節介な同級生を睨み付け、ミツは教室へ向かう足並みから逆らって屋上へと向かった。
 ミツと廊下ですれ違う他の生徒達が尽く関わりたくないと顔を反らす。

『……。』
「……っ。」

 ふと聞こえた言葉に、声の主を思わず睨み付けた。相手が顔を青ざめさせたところで、再び足を動かし始める。

 父親似の切れ長の二重の漆黒の瞳をブルーのカラーコンタクトで隠し、母親似の柔らかな金髪を真っ赤に染めたミツは、ほとんどが生まれたままの姿や色を好む傾向にある、郊外育ちの生徒達の中でも異形の存在だった。

「……はぁ……。」

 締まっているはずの鍵を起用に針金で開け、ミツは日差しの強い場所を避け、日蔭へと腰を下ろした。日差しは強いが、日蔭に入れば肌に触れる風がほどよく心地よい。
 誰の視線も感じなくてよい、この空間がミツのお気に入りだった。

『アイツが番じゃなくて良かった。』

 目を瞑ると、先ほどの言葉が脳裏に蘇り、ミツは小さく舌を打つ。痛む胸を、制服の上から握り締めることで誤魔化す。

「……俺だって誰がお前らなんかの番になるかっ。」

 高校に入る直前、突然の病で母親が亡くなってから全てが始まった。

 母親が埋葬されたその夜、ミツは父親に犯されたのだ。

『愛してる。愛してる。愛してるんだ。』

 同じ色の金髪を持つ自分を母親と混同し、母親の名前を呼びながら涙を流し、自分を揺さぶり続けた父親の黒い瞳が今でも忘れられない。
 翌日、ボロボロの体で美容院へと向かい、美容師の反対を押し切って真っ赤な髪に変えた。鏡に映る自分の黒い瞳が怖くて、カラーコンタクトで隠した。

 全てを終え、夜中に家へと変えれば、そこには自分を抱いていた精液塗れのベッドで母親の遺骨を抱き、首から血を流して自害した父親の姿があった。

「……っ……うぐっ。」

 思い出すだけで込み上げる気持ち悪さに、ミツは横たえた体を丸めて耐える。

 一人残されたミツを見つけ、歳の離れた叔母が優しく抱きしめてくれなければ、きっと自分も壊れていたに違いない。
 叔母も父と同じく番に先立たれた身だったが、父親のように壊れることはなく、今も郊外で静かに暮らしている。生前、父親は叔母のことがあまり好きではなかったようで、叔母も父親を訪ねてくることはなかった。しかし、その日は虫の知らせがあったらしい。

『今日から家族ね、ミツ。』

 惨状を知る親戚たちが一様に断る中、ミツの髪色も、瞳の色も、父親最後の光景にも何も触れず、後見人になってくれたのだ。内容が内容なだけに、様々な噂が一斉に広がった街から離れられたのは、ミツにとっても気が楽だった。

 番なんていらない。

 それがミツの出した答えだった。
 ミツの願いが叶ったのか、高校生活が始まっても番の匂いを感じることはない。あえて一人になるのは、番の匂いを避ける目的でもあった。
 関わる人数が多ければ多いほど、いつか番に出会ってしまう。ミツにとって番の存在は、恐怖そのものになっていた。

「……はぁ。」

 冷たいコンクリートの床に頬を押し付け、ミツは瞳を閉じる。

 この場所は好き。風が気持ちいいから好き。
 ときどき風に乗って、花のいい匂いがするから。
 今日はいつもより匂いが濃い気がする。花がたくさん咲いたのかもしれない。

 フワッ

「……ん?」

 柔らかく、暖かいもので体を包まれ、ミツは閉じていた瞳を開いた。
 屋上の鍵はかけた。この場所には自分しかいないはずなのに。

 ペロッ

「……へ?」

 頬に滑った生暖かいものが触れる。視界に映った光景に、ミツは体を強張らせた。

『ようやく迎えに来れた。会いたかった、我が番よ。』

 目の前には真っ白の毛皮と、恐ろしく鋭い爪。独特の短い吐息が耳元で聞こえてくる。ぎこちない動きで首を、本来なら空が見えるはずの場所へと向ければ、そこにはミツの顔など一飲み出来るほどの大きな口があった。

「っ、ひぃっ!白狼?!」

 中学の頃、自分達人間とは別の環境で暮らす獣族について学んだことがある。その資料の中で、一際皆が興奮していた獣族の一つが白狼だった。
 縄張り意識が強いため人間が生活する場所では滅多に見ることはない、真っ白な毛皮からは想像できないほど凶暴で、森の暴れ神様と呼ばれる存在。
 同じく森の守り神と呼ばれる金色に輝く金虎族とクラスで人気を二分していたのを覚えている。

「……な、ん……で。」
『迎えに来たが……先に味見をさせてくれ。近くで感じる匂いは本当に心地よい。』
「うわぁっ!」

 大きな舌で頬を舐められ、捕食される恐怖がミツを襲った。しかし、舌が頬、首筋へと触れる度に香る花の匂いに、ミツの体が確実に熱を帯びていく。

「……う、そだろ?」

 それは、まさに授業で学んだ『番』の匂いへの反応そのものだった。
 番が自分と同じ人間じゃない。その事実を受け入れるには、ミツはまだまだ子供だった。

「や、やだっ!助けてっ!誰かっ、誰かぁっ!」
『なぜ逃げる。なぜ我を拒む。』
「ひっ……、ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ。」
『……。』

 偽物の青い瞳から流れ続ける涙を、白狼は何度も何度も舌で拭ったが、ミツの涙は止まらない。白狼が目印にしていた香りもすっかり弱くなっていた。ミツの言葉が分からない白狼は、寂しそうに耳を伏せる。

『なぜ泣くのだ……。』
「っ、ひっく……うぅっ……。」
『……仕方ない。』
「ギャアッ?!」

 白狼に無理矢理襟を持ち上げられたかと思うと、体が乱暴に投げられる。
 コンクリートに叩き付けられる衝撃に備えたミツを包んだのは柔らかい白い毛皮だった。

「……え?ちょ、うわぁっ!」

 状況を整理する時間さえ与えず、白狼はミツを背に乗せたままフェンスへ向かって飛躍する。もちろん固定ベルトなどない。数分前とは違った内容の恐怖に襲われ、ミツは必死に白狼へとしがみついた。綺麗な毛が何本も抜けた気がしたが、白狼から落ちれば確実に命はない光景が広がる今、もはや白狼のことなど考える余裕はなかった。

「ぎゃああああああっ!」

 フェンスから白狼が飛び降りた瞬間、ミツの記憶は真っ暗に染まった。









「……ツ……ぶ?」
「……ん。」
「ミツ……ツ……ミツ。」

 柔らかなものと心地よい匂いが体を包む中、懐かしい声が聞こえた気がした。

「ミツ……もう、ソルファ。貴方、どんな運び方してきたの。」
「……ワン、ワン。」
「飛び越えてって……。」

 頬を何度も暖かいものが這い、ミツに覚醒を促す。

 あれ?デジャヴ?

 ぼやけていた視界も徐々に鮮明になり、真っ白の毛皮と、恐ろしく鋭い爪が目の前に現れた。

「本当、あの子そっくりに育ったわね。」
「ワン。」

 呆れたような物言いは、まるで犬と会話しているかのようだった。あの白狼と対等に接する人間などいるのだろうか、とミツは視線を声の元へと移す。

「…………え?」
「あら、起きた?もう、びっくりしたでしょう。」

 そこには申し訳なさそうに眉を寄せた叔母の姿があった。

「……な、え?え?」
「おめでとう、ミツ。まさか貴方の番も白狼族になるとは思わなかったけど、見つかって良かったわね。」
「番……?白狼、族?」

 戸惑うミツの頬をまたあの暖かいものが這う。同時に花の匂いがミツに届く。

 叔母の言葉と自分を舐め続ける存在の意味、それは。

「ワン。」
「ひぃっ!」
「……あら?まだ声が届かないのね。大丈夫よ、体を繋げればちゃんとソルファの声が聞こえるようになるわ。」
「……へ?わ、ぶっ!」
「ソルファッ?!」

 ソルファ、と呼ばれる白狼に怖がるミツに、叔母が優しく微笑む。しかし、その笑顔を見る前に、ミツの体は再び宙へ舞うこととなる。







 グチュッ、ジュブッ、ジュブッ

「あああっ、ソルッ、あぁっ、そこだめぇっ!」

 ビュルルルルッ

「ひぃぃっ、ああっ、お、なか……熱ぃっ。」

 止まらぬ射精により膨れた腹を、強引に寝床に押し付けられ、苦しさにミツは涙を零す。しかし、一向に突き刺された熱は抜ける気配はない。

「ミツ……ミツ……。」
「は、ソル……も、ムリッ。」
「終わるまでこれは抜けぬ。」
「んあっ!!」

 もはや自分の腕で体を支えることもできず、ミツの体はソルファにより揺さぶられるがままとなっていた。強引に前立腺を押し潰され、ミツの孤立したペニスからは尿のようにダラダラと精液や先走りが垂れ続ける。それにより、白狼の寝床にはミツの林檎のように甘酸っぱい番の匂いが充満していた。
 濃い匂いにソルファの興奮が更に掻き立てられていく。荒い息と共に大量に零れ落ちる唾液をミツの背中や首筋に垂らしながら、ソルファは唸った。

「堪らぬ。これほどまでとは……。」
「ひっ、ああっ!」

 ビュルルルルッ、ブチュウッ

 中に入りきらない精液が、隙間なく塞がれているはずの孔から零れ落ちる。精液が内腿を伝う感覚に、ミツは思わず中を締めてしまい、太い熱の形をより鮮明に感じてしまう。

「ッ……これ以上締めるなっ。抑えきれなくなる。」
「やああっっ!」

 毛皮に包むよう体を近づけられ、ミツの中を抉る熱もより深くなる。深い挿入のまま奥へ叩き付けられる精液に、ミツは寝床の中に崩れ落ちた。
 中で膨らんだ瘤だけで繋ぎとめられた下半身だけが、ソルファに合わせて動く。

「ミツ……ミツ。」
「ぁ……ん、ソルッ……うぅっ。」

 何度も何度もソルファが自分の名前を優しく読ぶたび、ミツの中で暖かいものが広がっていた。これほど優しく、大切に自分の名前を呼んでくれる人、いや獣がいる。
 そして何より、互いの精液の匂いと共に香るソルファの、番の花の香り。

 やっと、居場所を見つけた。

 膨らんだ腹に手を当て、ミツは嬉しさと苦しさに涙を滲ませ、ゆっくりと意識を手放した。


終わり

詳細:人外(白狼)攻×不良風トラウマ持ち受

ミツ:十六歳。父親に乱暴され自分の容姿を嫌う。現在叔母と暮らしている。

ソルファ:二歳(白狼としては成熟)。実は叔母の孫。

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