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ユッカの場合:番外
Halloween企画:お菓子&悪戯編
注意:今回はサクラ目線。


 10月31日はハロウィン。街はオレンジや紫のハロウィン色に包まれている。
 もちろんその賑やかな雰囲気は、城下町だけではなくハクコ国の城内まで浸透していた。


「それで、この菓子を食べてからモリの様子がおかしくなった、と?」
「はい。間違っても毒物など混入はしておりませぬが、ご報告をと思いまして。」

 年末に向けて様々な書類が増え続ける第四王子の執務室に、神妙な表情を浮かべた第四王子夫人専属教育担当者のゾシュが現れたのは数分前の出来事だった。



「……本当に、あの方は。まぁ、以前が冷静過ぎたくらいなので仕方ないですが。」
「申し訳なかったね、サクラ。」

 王子が処理する書類を処理を急ぐ順に整頓しながら、サクラは主のいない部屋でゆっくりと珈琲を飲む老人を軽く睨み付けた。

「どうせ、モリ様の弱い酒類でもお菓子に混入させたのでしょう?……最近イセ様もお忙しくて、モリ様と触れ合う時間が少ない分仕事の処理スピードも落ちておられましたから、丁度良い補充です。」
「おや?そんなつもりはなかったが。」

 楽しそうに笑うゾシュは全くもって表情と言動が一致していない。
 昔からそういう男なのだと、働き始めから彼を観察しているサクラは知っていた。

「イセ様もそうだが、お前の方もちゃんと時間を取っているのか。このところ、ほとんどこちらで過ごしているのだろう?」
「もちろんですよ。」

 本当に的確過ぎて嫌味な男だ、と思う。表情を変えぬまま、サクラはゾシュを見送り、山のように積まれた書類を見てため息をついた。

 番が出来たと報告した途端、イセから与えられた使用人の家族用の部屋。そこが、サクラとユッカの新しい住居だった。
 しかし、城内にあるとは言え、イセの生活する部屋とはかなり離れた距離にあり、ユッカが引っ越してきた当初はそこから通っていたのだが、忙しい時期になるとそれも億劫になり、以前と同じ王子の部屋の近くにある使用人用の部屋へ寝泊りすることが多くなっていた。
 イセにモリという番が出来てからは、二人の世話担当も兼ねているため、その回数は増える一方だ。

「……久しぶりに帰ろう。」

 おそらく、否、絶対今日、明日とイセがこの部屋へ戻ることはない。何より、今日の二人の担当はサクラが直々に指導し育ててきた頼りになる後輩だ。自分が出る幕はないだろう。
 ゾシュの予測通りになるのは心底嫌だったが、サクラの足は既に愛しい番の待つ家へと向かっていた。

「あれ、サクラ?今日は家に帰るのか?」
「ジルル。君も?」
「そうなんだ、今日は仕事が早く終わってね。」

 後ろから声をかけられ振り向けば、そこには同僚のジルルがこちらに向かって歩いてくる。第三王子の使用人として有望なジルルとは高校の同級生からの腐れ縁だった。

「サクラの番は本当に忍耐強いよね。俺だったら、ずっと会えないなんて耐えられないよ。」

 ありえない、と首を振るジルルに、サクラは会えない間もひたすら自分を待っているであろう、ユッカの表情を思い浮かべて口端を上げる。

「二週間だよ。それに、会えない時間を作った方がユッカはいい顔をするからね。」
「……相変わらず腹黒いね、本当。」

 ジルルは使用人の中でも、王族並みに愛番家として有名だ。逆に、サクラは自分が番よりも王族を優先していることを自覚しており、他の使用人からもサクラに番がいることをよく驚かれるくらいだった。

「あまり距離を置きすぎると、いくら番でも違う相手に気持ちがいくことだってあるかもしれないよ。」
「それはない。」
「そうかな?サクラの番は純粋で可愛いし、番が相手にしないなら、って思う奴もいるかもしれない。」
「……。」

 番としての絆は、本能的なものだ。どんな相手だとしても番というだけで惹かれてしまう。
 しかし、番と出会うのは運命以外なく、出会えなかったものは番同士でなくても関係をもったり、偽番のような関係性を持つこともある。
 それはサクラも同じで、本人へは伝えてないが、ユッカと出会う前は後腐れない関係を持つこともあった。

「サクラ?」
「……悪い。先に帰る。」
「え?方向一緒じゃ……それに今日は。」

 まだ何か話しているジルルを置いて、サクラは早足に自宅へと戻った。
 久しぶりに見た我が家の玄関だが、その静けさにサクラは眉を潜める。普段はユッカが温めているはずの家には明かりがなく、静まり返っていた。
 ノブを回しても、鍵がかかっており開く気配はない。

「……ただいま。」

 滅多に使わない鍵を使い中に入るが、ユッカの匂いはおろか人の気配すら感じられなかった。嫌でも、先ほどのジルルの言葉が脳裏に過る。
 そんなときだった。

「最後までできなくて残念だったわね。」
「そ、そんな。でも、本当に楽しかったです。」
「少しでも楽しんでもらえて良かったわ。また、一緒にしましょうね。」
「は、はい!」

 玄関の扉越しにユッカと誰かの声が届いた。楽しそうなユッカの声に、サクラは自身の香りが強くなるのが分かる。

 ガチャッ。

「ただいま……って、電気付けてない?……に、兄ちゃん?」

 不思議そうなユッカの声が家に響くと同時に、薄暗い部屋に明かりが灯された。振り返っていたサクラの視界に移ったのは、大量のお菓子が入れられた籠を持ち、楽しそうに笑うユッカ。身に付けられた衣服は少し汚れていた。

「おかえりなさい。い、今ご飯作るね。疲れてるでしょ?座って待ってて。」
「……。」
「肉と魚どっちがいい?あ、それとも、パ、パスタにする?」

 リビングテーブルに籠を置き、当たり前のようにエプロンを身に着けて台所に立つユッカ。しかし、包丁を握ろうとしていた手は小刻みに震えていた。

「……っ。」

 その原因はもちろん、サクラが部屋に充満するほど強く香らせている匂いのせいだ。

「っ、に、兄ちゃん?」

 耐え切れず振り返ったユッカを、サクラはジッと見つめていた。

「ど、したの?」
「誰だ?」
「……え?」
「誰といた?」

 動けず固まるユッカに、サクラはゆっくりと近づきながらその匂いを強くする。台所の縁に必死に捕まりながら、香りに震え、無意識に涙を目に浮かべるユッカはサクラの質問に首を傾けるしかなかった。






「お菓子、ないね。」
「だ、てっ、これじゃっ……。」
「悪戯してほしいんだ。」
「んっ、ちがっ……。」

 暖かな湯に包まれながら、サクラはユッカの体から香る番の匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。
 同時に熱くなる体と、成長する熱に、ユッカの体がびくりと震える。
 ユッカの体が身じろぐたびに、ちゃぷちゃぷと湯が揺れていた。
 ハロウィンパーティに興奮した子供達に汚された体は、サクラによって丁寧に洗われ、様々な場所に赤い印が散りばめられている。

「も、だめっ、兄ちゃんっ。」
「駄目じゃないよ。ここはまだ俺が欲しいって締め付けてきてる。」

 しっかり埋め込まれている縁を指で擦られ、ユッカは堪らず背を反らせた。湯に濡れた頬にサクラの唇が触れるだけでも、体中に刺激が走る。
 繋がったまま抱きこんだ状態では、ユッカの抵抗などサクラには可愛いものだ。

「いつもより熱くてきつくて、俺も気持ちいいよ。」
「……っ。」

 ただ繋がっているだけ。しかし、動かなくてもユッカの体は一生懸命サクラを刺激してくる。

『今日は、ハロウィンだから……それで、ここに住む人達でお菓子をあげたりもらったりしようって。』
『でも、兄ちゃんが帰ってくるって聞いたから、急いで帰ってきた。』

 強引に連れて行った風呂場で、体を洗いながら聞き出したユッカの言葉を思い出しながら、サクラは赤く火照った杏の匂いがする首筋を舐めあげた。

「……んっ。」
「……ユッカがお菓子みたいなものだよな。」
「え?……何?」
「甘いなって言ったんだよ。」
「っ!」

 そろそろのぼせそうな表情を浮かべていたユッカに気付いたサクラは、繋がったまま体を強引に立ち上がらせると、壁に手を突かせて後ろから腰を打ち付けた。

 パンパンッ、グチュッ、パンッ

「んっ、んっ……っ、兄ちゃ、もぉっ。」
「出る?」
「出るっ、出ちゃうっ。」

 サクラの許可なしにはイけない、と刷り込まれているユッカは、震える手で必死に自分を握りしめている。しかし、そのペニスからは先走りが大量に溢れており、固く張りつめていた。
 視界の端でその様子を確かめたサクラは、更に激しく腰を動かす。

「だめっ、に、ちゃんっ……んぅっ。」
「いつから言うことを守れない悪い子になった?」
「っ……ご、めな、さっ、でもっ、ああっ。」

 パンパンパンッ、グチュッ、ズブッズブブッ

「ひぃっ、あっ、だめだめっ。」

 涙を流しながら、頭を振り続けるユッカ。その足はもはやサクラが腰を支えていなければ立てないほど震えていた。それでも必死に自分のペニスを握りしめている。

「ん、俺もイきそう。一緒に、な?」
「う、んっ、うんっ。」

 一際強く、ユッカの前立腺を擦りあげ、深く打ち付けた途端、その刺激にビクッと痙攣した中に搾り取られる形でサクラはユッカへと射精した。同時に、ユッカの精液が揺れる湯船の中へと落ちていく。
 ひんやりと冷たいタイルに体を預けていたユッカの体に急に力がなくなり、慌ててサクラは腹へと腕を回した。繋がりを解き、簡単に中を綺麗にすると、横抱きで浴室を後にする。

 柔らかなベッドに寝かせ、ユッカの表情を覗き見ると、疲れていながらも嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
 その笑顔に、サクラの表情も緩む。

 湯当たりによる頭痛と体のダルさに泣きだすユッカをサクラが必死に宥め、番休暇を取らざるを得なくなるのはもう少し後の話。


終わり。

リクエストワード
@サクラからユッカへ
A勘違いしたサクラがお仕置きエッチ


ありがとうございました。

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あきゅろす。
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