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ケイイチの場合
身長差攻め×金髪受け

 この世界には番と呼ばれる自分にとって唯一の存在がいる。それは世界共通の事項であり、他国でも変わらない。



「―というのが我が社のプランになります。―の部分はご希望を伺い―…。」

 大勢の営業マンが集まった会議室で、淡々と自社のプランを説明するのは、綺麗な金髪が一際目立つ長身の男。大きな金額が動くため、誰もが必死に自社のアピールを、そして他者を蹴落とす作戦を練る中、彼はその思惑に満ちた視線に臆することなく全てを終えた。

「流石ですね、主任。」
「当たり前だ。」

 やや興奮気味に話しかけてくる後輩を冷たい視線で軽くいなし、ケイイチは他社のプレゼンへと耳を傾ける。
 プレゼンをする営業マンの中には、犬耳や熊耳を持つものもいた。それはこのセイリュ国の特徴でもある。

 セイリュ国は獣人が多く生活する国として有名だった。それは現王族が獅子の獣人であることが大いに影響しているのだが、他国よりも獣人への待遇が良いため、必然的に他国からも獣人が集まってくるのだ。
 ケイイチも初めてセイリュ国へ出張に来た際は、勉強していたもののあまり見る機会のなかった獣耳を持つ者の多さに、酷く驚いたのを覚えている。
 それは今回初めてケイイチに同行した後輩も同じらしい。本来であれば他者のプレゼン内容を理解し、どこまで自分達が修正できるかを考えるべき今、彼の視線は今プレゼンをしている者の頭で揺れる兎耳に集中している。

「プラン内容については一度こちらで内容を再検討させていただきます。本日はお集まりいただきありがとうございました。」


 長い合同プレゼンを終え、ケイイチ達はホテルへと向かった。

「うちのライバルになりそうなのは、やはりT社ですね。プランの内容が似ている上に、金額も差がないし。」
「……。」
「主任?」

 堅苦しいスーツを脱ぎ、Yシャツ姿になると真剣な表情でプラン内容を確認する後輩に、ケイイチは思わず目を見開いた。

「ちゃんと聞いていたのか。」
「え?!当たり前じゃないっすか!」
「耳しか見てなかっただろ、お前。」
「そ、それは……でも話は聞いてましたって!」

 焦ったように視線を彷徨わせるため、図星だったらしい。

「……だ、だって、皆堂々と出してるし……。」
「だからそうだ、と話してあっただろう。」
「でも……っ。」

 うーうーと唸る後輩を余所に、ケイイチは自分もスーツを脱ぐ。明日は昼前には電車に乗りたい。会社に帰れば、嫌というほど上から任された書類達が待っているだろう。
 ホテルに来る前に適当に買ってきたおにぎりを頬張り、溜まっているメールを読み進める。
 返信のため、キーボードに手を置いたそのときだった。

「……っ、おいっ!」
「だって、だって!」

 ぎゅっと体を抱きしめられ、ケイイチの鼻にライチの甘い香りが届く。グルグルと耳に響くのは後輩、ラトの唸り声だった。

「ラ、トッ!」
「ケイイチさんのこと、あの熊耳野郎厭らしい目で見てたし、あの兎耳だってすげぇアピールしてたんだよ!なんで気付かないんだよっ。」
「はぁ?」
「ケイイチさんは俺の番なのにっ!」
「うわっ。」

 強引に体をベッドへ押し倒され、自分に覆いかぶさるラトを睨もうとしたケイイチは顔を引き攣らる。
 自分とは違い、僅かに緑のような色が滲む淡い灰色の髪には、ピコピコと動く猫耳があった。普段隠されているそれが出てきていることは、ラトが興奮していることを示していた。

「ラトッ、落ち着け。」
「やっぱり、ここに移住するのは嫌だ。ケイイチさんみたいに綺麗な人をあの視線に晒すなんて耐えられないっ。」

 普段は笑顔で主任、主任、と近寄るラトの真剣で、少し泣きそうな表情に、ケイイチは小さくため息をつく。

「俺はお前が耳を隠しながら生活してるのが、辛いんだよ。隠すのだって痛いだろ?」
「いいよ。ケイイチさんが俺の番で傍にいてくれたらそれでいい。」

 いやいや、と鼻先をケイイチの首筋に擦り付けてくるラトを、ケイイチは優しく抱きしめた。ついでにお気に入りの柔らかい獣耳を撫でる。
 身長がケイイチより低いため、ラトの耳は出ていれば常にケイイチの視界に入る。触るたびにピクピク動く猫耳はお気に入りでもあった。
 その感触を楽しみつつ、縋りつくラトをしばらく抱きしめていたのだが、ふいに首筋を舌で舐められ、ケイイチは慌てて体を起こそうとした。
 しかし、細い体のどこにそんな力があるのか、ラトに押し倒されたままの体は動かない。

「おいっ……。」
「だって、こんないい匂いなんだ。綺麗でいい匂いで……全部俺のもの……。」
「んっ。」

 べろり、と喉ぼとけを舐められる。ラトの舌は猫のようにざらついており、舐められるだけでもケイイチの体は刺激に火照り始めた。
 ライチの香りが強くなり、嫌でも体の力が抜けて熱が高まっていく。

「ケイイチさん。」
「う……ら、とぉ……。」
「ケイイチさん、ケイイチさんっ。」

 いつの間にかシャツを開かれ、淡いピンク色の右乳首へと舌が這う。猫がミルクを舐めるよりも強く、厭らしく舐められ、吸われ、ケイイチは胸に顔を埋めるラトの耳を引っ張った。
 その行為を嫌がるそぶりも見せず、ラトの指が左乳首を摘みあげる。

「っ、く……。」

 ペロペロッ、チュッ、ペロッ

 ひたすら尖りを舌で嬲られ、ケイイチの足がもぞもぞと無意識に動いてしまう。それに気づいているだろうが、ラトの口は乳首から離れなかった。

 くそ、相変わらずそこ好きだなこいつ。


 淡い色だったそこが、真っ赤に色づき、乳輪だけでなく全体が唾液で濡れた頃、ようやくラトは舌を離した。
 つい夢中になってしまった罪悪感から、怖々と視線を上げれば、汗で金髪が額に張り付き、僅かに目じりを赤く染めた壮絶な色気を放つ番が睨み付けていた。

「け、ケイイチさん?」
「……。」

 無言の訴えは、ラトに冷静さを取り戻させる。

「ご、ごめん。」
「……。」
「ケイイチさん。ごめん、ね……え?」
「……っ!」

 機嫌を取ろうとラトが指を伸ばしたのは、放置していたケイイチの股間だったが、触れた途端『クチュッ』とやけに大きな水音が響いた。静かな部屋に響いたそれに、下にいるケイイチの体がビクリと強張る。

「……ケイイチさん、もしかして。」

 視線を再度ケイイチへと戻せば、先程よりも赤く、更には耳まで朱に染めていた。唇を噛みしめ、ラトの視線を逃れるようにきつく瞼を閉じている。

「っ!ケイイチさーんっ!」
「……最悪だっ。馬鹿猫っ。」

 ライチの香りを最大限に振りまき、抱きつき、喜びを表すラトに、ケイイチの羞恥心は嫌でも高まった。
 ラトが日頃やりたいやりたいと強請っていたが、ケイイチが断固拒否していたそれ。乳首だけで、ついに乳首だけでイってしまったのだ。

 やめろ、離せ、と何度も伝えたにも関わらず、強引にズボンと下着を脱がされ、白濁で濡れたそこを指でなぞられる。

「嬉しいなぁ。本当に嬉しいなぁ。」
「触るなっ!……んんっ。」
「ここまで垂れてる。」
「言うなって!」

 精液のぬめりを借りて、ラトの細い指がケイイチの中へと挿入された。中を掻かれれば嫌でも、いつもの快感がケイイチを襲う。
 体を強引にうつ伏せにされ、尻だけを上げた姿勢でラトが再び覆いかぶさってきた。グルグルと煩く響く声と、ライチの香り。

「ケイイチさん大好き。大好き。」
「ぐぅっ……。」

 乱暴に太く硬い熱を捻じ込まれ、唸るケイイチの項にラトの歯が食い込んだ。
 マウントを取られる悔しさも、中を柔らかい棘のあるペニスで擦られれば、考えられなくなるくらい強い刺激が下半身に走る。

「やぁっ、ん、あっ。」
「ケイイチさんっ……熱い、気持ちいい……。」

 逃げ腰になるが、もちろんラトが逃す訳がなく、細い腕で抱きしめられた。いつの間にか現れていた長い尻尾で内腿を擽られ、ケイイチのペニスからとぷり、と白濁交じりの液体が零れ落ちる。

「い、てぇっ、馬鹿猫っ。」
「ん、ごめん。だって、俺猫だもん。」

 がぶがぶ、と首筋を噛まれ、今日もまた痕が残ってしまうのだろう。押さえつけようとするのは獣人であっても残っている猫の本能なのか。
 中で弾ける熱に、同じく体を痙攣させ、ケイイチは本日二度目の白濁を吐き出した。

「ケイイチさん大好きっ。」
「……ん。」



終わり。


わんこだけど猫獣人攻め×金髪上司受け

ケイイチ:二十八歳。やり手営業マン。ラトと出会ってからはラトが隠すことなく獣人として過ごせるように思案している。首を噛まれることが悩み。身長178p
ラト:二十三歳。入職時に番と分かってからもケイイチの部下として働く。普段は薬で猫耳や尻尾は隠している。ケイイチ至上主義なので自分のことはわりとどうでもいい。身長170p(成長中)


セイリュ国:獣人族が多く住む国。他国との交流が多い。


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