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リュウの場合
強引攻×平凡受/遅れてきた運命/無理矢理



 この世界には番と呼ばれる自分にとって唯一の存在がいる。番の存在は自分がこの世に生まれてたときから決まっており、その存在と一生のうちで出会えるかどうかは運次第だった。

「お疲れ様でした。」
「おー。気を付けて帰れよ。」
「リュウ君、また明日もよろしくね。はい、これ。」
「いつもありがとうございます。」

 売れ残ったパンを数個袋に詰めて渡し、仲睦まじく自分を送り出してくれる夫婦に頭を下げ、リュウはすでに日が落ち薄暗くなった道を歩き始めた。往復し続けている道は、時折新しい店が完成しては潰れ、また完成しては潰れを繰り返す以外は何も変わらない。
 まだ空いていた商店で適当に食材を買い込み、今日の晩御飯を考える。ただしパン屋で働いてから、主食を考える必要がないから、レパートリーはそこまで多くない。

「シチューでも作ろうかな。」
「今日の夕食はシチュー?」
「うわっ?!」

 おススメされた人参とじゃが芋で思いついたメニューを口にした途端、背後から肩を掴まれ、リュウは思わず紙袋を落としてしまった。

「あーっ!」
「あ、わりぃ……。」
「ギリッ!お前いつもいつも急に後ろに立つの止めろよ。」

 転がるじゃが芋を手早く集めてリュウは肩を掴んだ張本人を睨んだ。自分と同じく仕事帰りらしいリュウは汚れたつなぎ姿で申し訳なさそうに頭をかく。
 まわりから「番がいなければ」絶対アタックするのに、と憧れの的である整った顔立ちは、そんな動作をしても格好いいから気にくわない。

「リースに言いつけるからな。」
「えぇっ!それは勘弁して!飯抜きにされる!」
「されればいい。無駄にデカいその体も少しは小さくなるだろ。」
「そんなぁーっ、リュウ様悪かった。本当ごめんって。」
「……あ、噂をすればリースだ。」
「えっ?!」

 自分より頭一つ大きい体で抱きつかれ、リュウは適当な場所を指差す。その途端、勢いよく体を離したギリが期待に満ちた顔をリュウの指差した場所へと向ける。その姿があからさますぎて、リュウは思わず笑ってしまった。

「嘘だよ。リースがいたらお前匂いでわかるだろ」
「あ、そういえば。でも、俺、結構鼻鈍いからなぁ……。」
「鈍い?」

 幼馴染として小・中・高校と一緒だったギリが明かす初めての内容にリュウは首を傾けた。ギリは高校ですぐに番が見つかったため、匂いに敏感だと思っていたのだ。

「そうそう。リースが俺の匂いに気付いて近づいてこなかったら、俺多分分からなかったし。リースの匂い自体が薄いのもあるけど。」
「……ふーん。」
「だからリュウの番も、鼻鈍いんじゃないか?お前が動けばきっと見つかるって。」
「あー……うん。」
「またそんな興味ないって顔する……番っていいよ?本当癒されるし、匂いに包まれると幸せーってなるし。」

 確かにリースと一緒にいるギリは本当に幸せそうだ。でも、もう二十五歳になるのに全く番の匂いを感じないリュウには耳の痛い話だった。
 普通ならば二十代前半には大抵の人が番を身近に見つけ、契約を結ぶ。だからこそ二十五歳を超えても番の匂いを感じない人は、番が自分の暮らす地域にいない、つまり一生出会えないことと一緒だった。
 リュウはつい先月、その運命の二十五歳を迎えていた。二十四歳になったときから、番を既に見つけている知り合い達から何度も何度も交流の場へ招待されたが、リュウが匂いを感じることはなく、二十五歳になった今、全てを諦めることにしていた。
 ギリほど格好良い男であれば、番ではなくとも共に過ごそうとアピールする者たちも現れるのだが、生憎顔も身長も平々凡々なリュウに声がかかることはない。

「別に、出会えなくても生活できるから大丈夫だ。」
「……リュウ。」
「ほら、お前も早く帰れよ。心配されるぞ。」
「……じゃあ、またな。」
「おー。」

 ギリと別れ、リュウは自宅へと戻った。パン屋へ就職した後、番が現れないことに不安を抱く両親の顔を見るのが嫌になり、近くのアパートを借りたのは三年前。誰もいない真っ暗な部屋に帰るたび酷く寂しく思えたが、一年も経てばそれにも慣れた。

「ただいま。」

 癖で口にしてしまう言葉を返してくれる者などきっと現れないだろう。
 窓を開け、籠った空気を外に出す。夜風が部屋の温度を下げる気持ちよさにリュウは目を細めた。

「さてと。作るかな。」

 台所のみ明かりをつけ、シチュー作りに取り組む。適当に切った大きめの人参、大きめのじゃが芋を深めの鍋に放り込み、コンソメの素を適当に入れる。ある程度煮えたら牛乳を注ぎ込み、小麦粉でとろみをつける。作り方は一人暮らしに慣れず、食事に四苦八苦していたリュウに気付いて根気よく教えてくれたパン屋の奥さん仕込みだった。

「……ん?」

 あとは煮込むだけ、となったため、トースターで食パンを焼いていたそのとき。パンの焼ける匂いに混じって爽やかなミントの香りが部屋に漂った。

「ミントなんて買ってないけどなぁ……。」

 冷蔵庫の中身を見てもやはりミントなどない。他の住居人が何かしているのだろうか。そんなことを考え始めたそのときだった。

 コンコンッ

「ん?はーい。」

 夕食時に訪れる人など滅多にいないはずだった。なにせ、リュウと同年代の友人達は既に皆番一筋となっており、急用以外で自宅を離れることはないのだ。不思議に思いながら、リュウは扉を開けた。

「どちらさ……っ、あ……。」

 扉を開けた途端、一気に部屋へ流れ込んだ噎せ返るようなミントの匂いにリュウは思わず腰が抜けて玄関に座り込む。本来ならば爽やかな匂いと称されるミントの香りが、呼吸するたびに体の熱を上げた。もはや座っているのも辛く、リュウは飲み込めずにいた唾液を口から零して体を横たえる。

「……な、に……?」

 熱くて熱くて、辛い。
 呼吸を荒くしながら、リュウは玄関で己を見下ろす男を見上げた。男はゆっくりとした動作でリュウの頬を撫でる。体が近づいたことで更に強くミントの香りが鼻孔を擽り、リュウは身震いが止まらなかった。

「や……やぁ……。」
「……。」

 何度頬を撫でられても涙は次々溢れ続け、リュウは必死に男から逃れようと体を捩じらせる。

「はぁっ、ぁ……ん……や、ぁ。」
「……見つけた。」
「カルガ様、番様との出会い、おめでとうございます。」
「つ、が……?」

 濃い匂いに包まれ朦朧とする中、リュウの体が男により抱き上げられる。胸板に押し付けられる形となり、匂いの強さに、ついにリュウは意識を手放した。








 グチュッ、ヌプッヌプッ

「……ふ、ぅ……あ、あっ。」

 頭や体がグラグラ揺れる感覚に、リュウの意識がゆっくりと戻ってくる。遠くの方で、妙な声が響いていた。女にしては低く、男にしては高い、小さな声。

 グチッ、グチッ、ヌププッ

「……リュウ……リュウ。」
「ん、ぁっ、は…………え、あ?……えっ」

 ふと、自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、ゆっくりと目を開けると、そこには全裸で額に汗で濡れた黒髪を張り付かせ、無表情で自分を見つめる男の姿があった。
 その黒い瞳に、リュウはなぜか胸が高鳴る。あまりに精悍で男の自分から見てもエロい姿に眉を潜めたのもつかの間、あり得ない場所から感じる熱さに、視線を男の顔から首、そして腕へと移す。
 男らしい、逞しく鍛えられた腕が持つ足の持ち主が自分だと気づいたのだ。

「っ!!お、お前っ……んあっ、何を、っ……ひぃっ。」
「……締まった。」
「なっ!」
「……リュウ。」

 グッ、グッ、グッ、グチュゥッ

 男の発言に、リュウは顔が真っ赤に染まるのが分かった。無表情のまま男が腰を動かし始め、体を抉られるような強い快感に、中のペニスを思わず締め付けてしまう。

「ひぃっ!ん、んっ。あっ、あっ、あぁっ。」

 逃げようと腰を動かすが、逆に中を抉る形となり、視界がチカチカするほどの刺激が襲ってきた。男はリュウの足を持ち直すと、痛くないのが不思議なくらい深く突き刺し、奥へとペニスを押し付けてくる。

「や、ああっ、ん、な奥、むりぃっ!うぁっ。」
「奥……締まる。」
「っ、あーっ!」

 所謂M字開脚で深く深く男を受け入れ、リュウは頭を反らした。その喉を男の唇が這う。ぶわり、とあのミントの香りが漂った。
 男のモノが奥に入れば入るほど、蕾からは中から何かが溢れ、臀部を濡らしていく。

 い、息が出来ない。苦しいっ。

「はーっ、はぁっ。」
「ん、出す。」
「……えっ?!や、やだっ!中、はっ……。」

 一層中で大きくなったのは気のせいではなかったらしい。首筋に顔を埋めながら、僅かに息を乱す男の台詞にリュウは目を見開いた。途端、溜まっていた涙が溢れ出す。
 力の入らない手で必死に男の肩を押すが、体が離れることはなく、リュウの頬を濡らす涙を男の舌が掬い取った。

「嫌?もう互いに何度も出しているだろ。」
「なっ?!」
「……出す。」
「やっ、やだやだやだやだっ、やぁーっ!!」

 腰を強く押し付けられたかと思うと、男の体が僅かに震え、奥に熱いものが叩き付けられた。その瞬間、体が燃えるように熱い刺激が全身に走り、リュウは体を痙攣させた。無意識に足を男に絡ませ、ペニスを加えた中を震わせる。全てを搾り取るその動きに、男は無表情だった顔を僅かに歪ませ、リュウの首筋へと歯をたてた。

「……っ、ぁ……ふ、ぅ……ぁ。」
「は……意識があるとここまで……。」

 中に液体を塗り込めるように動くペニスをキュウキュウ、と締めながら、リュウは何かが満たされた、そんな感覚に再び瞼を閉じた。

「……リュウ?……また気を失ったか。」
「……失礼致します。カルガ様、そろそろ朝食の準備ができましたが。」

 力なくベッドへと体を沈めたリュウを見下ろしていたガルガは、カーテン越しに背後から聞こえた声に、リュウを視線に捉えたまま「否」と答えた。

「後ほど陛下と王妃様が番様に挨拶を、と申しておりましたがいかがされますか?」
「……親父は何日だった?」
「……三日間、でした。」
「…………二日後だ。」
「分かりました。何かあれば及び下さい。」

 説明せずとも使用人が内容を理解するのは至極当然のことだった。
 王族は番に対する情熱が国民よりも格段に強いということを知る者は多いが、初対面後、数日間自室、主に寝室に籠ってしまうことは使用人や当事者達しか知られていない。
 子孫を残す意識が遺伝子レベルで高いため、と言われているが、王族が十八歳、つまり成人になるまで番を見つける能力が出現しないことによる反動とも言われている。



 全く萎える様子のないペニスで中の感触を楽しみながら、カルガはリュウの頬を撫でた。目元を赤く染め、情事特有の噛み後や吸い痕を散らせた肌、何より桃のように甘いリュウの匂いがカルガの興奮を引き出す。
 リュウを見つけたのは本当に奇跡だった。ようやく成人の誕生日を迎え、祝いの義を行った翌日、忍びで降りた城下で、子供が食べていたパンから番の匂いを感じ取った。すぐに子供から購入したパン屋を聞き出し、働いているリュウを見つけたのだ。
 甘美すぎる香りに、思わずそのまま攫ってしまいたくなったが何とか堪え、その足で城に戻ると、陛下に番の発見を伝え、使用人に命令しリュウの部屋の用意を済ませた。
 既にリュウの荷物が部屋へと運ばれているだろう。リュウの両親、仕事先へ番となった事実を伝える使者も本日中に出す予定だ。

「……んぅ。」

 半開きの口に誘われるがまま、舌を差し入れた。甘い口内をじっくり堪能する。まだ意識は戻らないが、舌を吸うたび中を可愛らしく締め付けてきた。
 口を離し、ペニスを僅かに抜けば赤い縁が必死に広がり何度も注ぎ込んだ白濁が隙間から零れ落ちる。

「……。」

 ゆっくり抜き差しを再開しながら、カルガは無表情と称されるその瞳を細めた。

「……リュウ、愛している。」


終わり。


詳細:王族年下無表情攻×年上平凡優男

リュウ:二十五歳。平凡家庭、平凡男子。大学へ行くよりも社会に出て就職することを選ぶ。番に出会えず、心の中では寂しさを抱いていた。

カルガ:十八歳。第二王子。既に番の見つけた他の王族の様子を見ているため、少しずれている(王族としては普通)の思考を持つ。表情が動かないことで有名。

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あきゅろす。
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