[携帯モード] [URL送信]
腐っても縁
幼馴染同士


 親友同士の父親、双子姉妹の母親、徒歩五分以内のご近所付き合い、同学年、同小、中、高。挙句に小学校六年生以外は全て同じクラスとくれば、腐れ縁なんていう可愛いものなどではなく、もはや何かの呪いだと思い始めたのは高校三年生の冬、例にそぐわず同じ大学に合格したときだった。

「りょー、なんか飲む?」
「飲まない。いらない。実家帰る。」
「飲まないなら、もう一回する?」
「お茶を下さい。和彦様。」
「素直でよろしい。」
「うぎゃっ!」

 遠慮の欠片もなく冷たいペットボトルを頬へ押し付けられ、思わず飛び上がろうとした体は、下半身の激痛であえなくベッドへ再ダイブ。
 ひりひりする。痛い。まだ違和感が抜けないのがものすごく嫌だ。
 そもそもあんなものをあんな場所に入れる方が間違ってる。只でさえあいつのあれは俺の立派な、そりゃあ立派なあれよりもほんの少しだけでかいブツなんて、本来入って良い訳がない。
 同じ大学に入学するからという親の提案で無理矢理一緒に暮らすことになった初日、恥を忍んで脱童貞計画を相談した俺がバカだった。挙句に恥ずかしい写真まで撮られて、俺の立場は悲しいことにあいつの幼馴染から下僕に変わってしまい今に至る。
 てか、週に何回ヤるんだよ、こいつ。

「くそ痛い……。」

 差し出されたお茶を一口だけ含むと、寝心地だけは格段にいいベッドに体を預けて再び伏せの体勢をとった。痛む部分を下にして眠ることなど絶対にできない。
 下手くそめ、と言いたいところだったが、その言葉を口にした自分の末路が分かるだけに、多少の痛みは我慢の範囲内だ。

「つーか、りょー。お前また香水変えただろ。臭いんだけど。」
「え?マジで?」

 もう少しで睡魔に身を預ける寸前、痛くて動けないのをいいことに先程から背中や首を匂いを嗅ぎ続けていた相手の言葉に、思わず嬉しさで声が上ずった。
 本当は香水など興味はなかったが、互いの香水の匂いが嫌いでセックス前に喧嘩した友人の話を聞いてから、ひたすら和彦の苦手な匂い探しをしていたのだ。

「……臭い。風呂上がりにつけんなよ。萎えるだろ。」
「萎える、よな。そうだよな、ごめん。」

 和彦に悟られないよう布団に顔を埋めたが、正直笑いが止まらなかった。これからは毎日体中に大量にふりかけてやると画策していたそのときだった。

「っ?!ちょっ、かず!」

 濡れた何かが痛む孔に入り、思わず体が硬直する。それが何かなど、嫌でも想像がついた。慌てて顔を上げて背後の相手を睨めば、完全に臨戦態勢に入った和彦と視線が合う。

「な、んで……いっ、やだっ。」
「なんか今ムカついたから。」
「はぁ?んっ、おいっ……きょ、今日は無理だってもう無理無理痛い。入んねぇからっ。」

 既に何本か入ってるらしく、動く指が気持ちいい部分を刺激する。中は気持ちいいけれど、正直拡げられた孔の痛みは限界値を突破していた。

「……痛いってマジだったんだ。」
「俺はいつでもマジだっつーの!本当に許して。マジでがばがばになるからっ。」
「そりゃないだろ。あれだけ俺の締めつけてりゃ大丈夫だって。」
「っ!アホボケカス!ちょっとはオブラートに包め馬鹿野郎!んんっ!だから、早く抜けって言ってんのっ。」

 もう涙が出る。何が辛くて幼馴染の指でこんな変な声を出さなきゃいけないのか、男相手に入れるなと懇願しなきゃいけないのか。もう恥とか、プライドとか関係なく、俺はボロボロと馬鹿みたいに泣いてしまった。

「お、おいっ?泣くなよ、な?りょー、ほら抜いた。抜いたから。つーかこれ生殺しだけど、耐えるから。機嫌直せ、な?りょーくん。」
「うるさい!こっちは最初から痛いの耐えてやってたのに、なんだよその態度!下僕に格下げしやがって!そもそもお前が彼女なんか作るから、俺だって欲しくなったっつーのに……お前に相談した俺が馬鹿だった。もうマジで実家帰る。」

 普段から隣にいて当たり前の存在で、身長も高くて頭も顔も良いから彼女なんていて当たり前だとは感じていた。
 それでも、高校の卒業式に告白されている姿を見たことが想像以上に衝撃的で、俺はその日を境に彼女を作って和彦と対等になることだけを考えていた。彼女がいれば、和彦が隣にいなくとも大丈夫だと思ったからだ。
 しかし、和彦に相談した結果がこの有様。おまけにガバガバを否定されるとか涙も出る。

「……彼女って誰の?」
「お前のだよ。卒業式で告白されてただろ、巨乳で可愛い子に。あーいいよな、お前は。俺は今でも童貞だどーてー。笑いたければ笑えば。つーか、いい加減彼女に全部抜いてもらえ、この絶倫野郎!」

 痛む体に鞭打ち、俺は手元の枕を思い切り和彦の顔面に投げ付けてやった。動ける状態ではないため、そのまま布団を掴み、繭のように上半身だけ包まる。
 顔を布団に押し付けてもまだ涙は止まらなかった。明日は酷い顔になるとか、よく考えれば頭隠して下半身丸出しの恥ずかしい格好になっているとか、理解はしていたが、涙が止まることはなく、そのまま襲ってきた睡魔に身を預けようと試みた。しかし。

「ひっ。」
「りょー、ごめん。わざと痛がってると思ってた。今度からはちゃんと良くしてやるから機嫌直して。」

 突然前を厭らしく嬲られ、伏せた背中に和彦の体温が密着する。どこで覚えてきたのか、指遣いは絶妙で油断した途端あっという間に布団が剥がされた。

「あっ、ちょっ、だか……らぁ、触ん……っ。」
「大丈夫。もう今日は入れない。気持ち良くするだけだから。」
「っ、んん。」

 項に熱が触れ、和彦の硬い髪が擽る。涙を拭うように舌が頬を伝い、無理矢理上を向かされまつ毛を舐められた。その間も動き続ける指からは聞きとれる位厭らしい水音が響き、おまけに和彦の息と自分の変な声を聞き続けるという羞恥プレイ。
 先程までの強引さとは違う、妙に丁寧な扱いに自分の顔が熱くなるのが分かった。

「……はぅ、ぁ、かずっ、和、もうっ。」
「相変わらず早いな、りょー。」
「うるせぇ、馬鹿や、お!お、おいっ、それ……くっ」

 和彦の言葉に思わず睨み返すと、楽しそうに笑った顔が徐々に下へと降りていく。あ、と思ったときには既に遅かった。

 ジュッ、チュプッ、ズズッ

「ふ、う……んっ、ん、ああっ!!」

 今見ている光景に驚く余裕はすでになく、熱い口腔の気持ち良さとカリを軽く噛まれた刺激で俺はあっけなく果てた。
 人生初めてのフェラの相手が幼馴染とか、誰が想像できただろう。極めつけは、出した俺のを和彦が躊躇いもなく飲み込んだことだ。

「ちょっ、何飲んでんだよ!出せ!吐け!今すぐ吐け、馬鹿!」
「馬鹿じゃねぇよ。別にお前のだし不味くても飲める。」
「飲めるとか言うな!」
「別に普通だろ。好きな奴のなら。」
「普通とかの問題……ん?何?今何て言ったの、お前。」

 変な台詞を聞いた気がしたため聞き返せば、笑うのが苦手なあいつが滅多に見せない笑顔で答えた。間近で見た和彦の笑顔は男の俺でも、変な気持ちになる。

「だーかーらー、好きな奴の精液ならいくらでも飲めるって言った。」
「……好きな奴?……和の?」
「そう。俺の好きな奴、お前。」
「俺?俺、俺が好きな……っ。」
「りょーが彼女作りたいとか言うからムカついた。だから童貞とかの前に処女奪ってやれと思った。ついでに可愛かったから写真撮った。それだけだから、別に脅すつもりはなかったし、下僕にするわけないだろ。」

 少しだけ拗ねたような表情を浮かべた和彦に抱きしめられ、俺はもはや理解不能な状況に涙も引っ込み、意識を飛ばしてしまった。

 下僕じゃなくて良かった。
 あれ?でも結局俺達って何?

終わり


前サイトからの転載です。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!