05:ハロー、ハロー、あなたはだれ?
「船長さん」
「ローだ」
「ローさん」
「なんだ」
「なんであなたが私のベッドにいるんですか」
「お前抱き心地抜群だな」
「答えになってません」
朝弱いと聞いていた船長さんが、朝起きたら隣にいた。
「あなた朝弱いんじゃなかったんですか?」
「昨日お前が寝てすぐこの部屋に来たからな」
「ああ、昨日からいらっしゃったわけですね。不法侵入って言葉知ってますか?」
「残念ながらここは俺の船だ」
「…」
間違ってない、間違ってないけどなんか違う。
この船長はなんでこうで…ああなんだ。
この時ばかりは目の前の綺麗な船長の顔も恨めしく思える。
普通にしてればかっこいいのに。
「ああそうだ、お前の着てた服に入ってた電伝虫、返すの忘れてたから届けにきた」
そう言って小さな宝箱のような木の箱を取り出した。
「…なんでまたこんなところに入れてたんですか?」
「あぁ…お前が落ちてきて今日でかれこれ一週間か…?まぁいいや、最初の三日間くらい昼夜問わず鳴りっぱなしでな。うるさくて敵わんから入れさせてもらった。」
おじさんだ。まず間違いなくボルサリーノおじさんだ。
心配…してないわけないよね…しまった…すっかり忘れてた…
背中にたらりと汗がつたう。
「ど、どうしよう…ローさん…」
「どうした」
「おじさん…心配してるよね…」
「ああ、政府に勤めてるっていう例の…とりあえず連絡しないわけにもいかないだろ」
それはそうなんだけど。
あのおじさんの事だ。
私が海賊と一緒にいる、なんてこと知れたらそれこそ“光の速さ”でやってくるだろう。
「ローさん」
「ん?」
「私が連絡したらローさん達が捕まっちゃいます」
下手したら殺されます。
「通報するわけじゃないだろうが…とりあえず連絡だけ入れとけ。“もう帰りません”ってな」
「いや何言ってるんですか帰りますよ私。それと、そういう意味じゃなくて『プルプルプルプルプル!!』
「そ、そういう意味じゃなくて…」
最悪のタイミングで鳴る電伝虫。
ローさんはそれを見てニヤリと笑う。
「出てみろよ、面白い」
こいつは…私が心配してるっていうのに。
でも確かに連絡しない訳にもいかない。
もう…もうどうにでもなれ!
ハロー、ハロー、あなたはだれ?
「――もしもし」
『あららら、繋がるじゃないの。』
『えー、こちら大将青雉』
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