07
皆が寝静まった中、月明かりに照らされたそこは学園の屋上。
「やぁっと動いたかー」
「おせぇんだよクソッ」
「五月蝿いですよ。…あぁいつもか」
そこには5つの影。
フェンス手前の段差に座って伸びをしている、その顔には奇妙なピエロの仮面を被っている―――『Joker(ジョーカー)』
地面に胡坐を掻いて座っていて今にも殴りかかりそうな勢いの、その顔には鬼の仮面を被っている―――『Demon(デーモン)』
フェンスに凭れかかって腕を組んでいる、その顔には歪んだ狸の仮面を被っている―――『Fraud(フラウド)』
「で、何人位なのー?」
「えーっと…まぁ19人って所ですな。随分な小心者ばかりだと思われます恐らく」
手で望遠鏡を作ってフェンスの穴越しに学園を見渡す、その顔には歪んだ狐の仮面を被っている―――『Strange(ストレインジ)』
「ちゃっちゃと終わらせようぜ。ったくメンドくせぇ…」
「まぁそれには同感してあげますよ」
そして。
「……」
4つの影とは少し遠くの屋上扉の高さがある壇に座ってひたすら月を見上げている、その顔には真っ黒な仮面を被っている―――『Eid(イード)』
「んじゃぁいっちょー?」
「こちらも動くとしますか」
声と共に、一斉に5人は動き出す。
五方向に散らばった後それぞれ学園の侵入者である目標、刺客を潰しにかかる。
「ック…」
「がァッ…、ッ…」
イードは自分に向かってくる刺客をひたすら無言で迎え撃つ。
薄暗い闇の中で、複数のナイフや拳が飛んでくるが全てを的確に避け、少しの余裕があれば飛んでくるナイフを上手い具合に受け、飛んできた方向へ投げる。
「クソッ」
「んの野郎…!」
今日の刺客は全身を黒で纏った服装。
捨て台詞を吐いて哀れに立ち去っていく負傷した刺客。
しかしまだ残っているのも居る。
「流石は死神…」
「こちとら一筋縄ではいかないってか」
イードは仮面の下で目を細め、一気に両手から6つの鋭利な刃物を六方向へ放つ。
各方面から短い悲鳴を聞き、踵を返してその場を後にしようとした。
途端。
―パァン
「ッ…」
音のした瞬間、咄嗟に避ける。
右足首に、明らか拳銃の弾が掠った。
「ちょっとォ〜?銃刀法違反って言葉知ってるー?此処日本だっつの」
「全く物騒ですねぇ」
援軍で来たであろうジョーカーとフラウドは、布で銃声を抑えてイードを狙い撃ったであろう刺客を背後から峰打ちして敵の居るであろう方向へ投げた。
「銃刀法違反っていうのはですねぇ、鉄砲刀剣類所持等取締法の略でしてその違反であります」
「アレ?刀剣類って事は俺達もNG?」
「戯言はいいンだよ。つーかもう掃除終了してっし」
いつの間にか5人全員集まっていた。
イードは掠った右足首を気にする事もなく歩こうとする。
「ちょっと待って」
それを止めたのはフラウドで、イードの近くまで来ると無言で拒もうとするイードを押し退けて甲斐甲斐しく手当てする。
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