05



「隼人、ゆくえに手を出すの、止めてくれる?」
「うわぁ、はっちゃんが興味を示してるぅ!」
「はぁ…食堂で騒がないで下さい」

上から、副会長、書記、会計だ。

副会長、門脇友紀(かどわきともき)はお優しいキャラではあるが、結構色々隠し持ってそうなタイプ。
金髪に青眼というハーフさながらの容姿で、綺麗なものが好きらしい。

書記、日比哲之(ひびてつゆき)は哲之、何て言う名前とは反して、可愛らしいフワフワキャラ。男でいいのか最早少女。
ハニーブラウンの髪をフワフワ仕上げにし、もう人形持ってても違和感無し。

会計、梨谷彩都(なしやあやと)は見た目不良なのに敬語キャラ。
紅髪にピアスなのだが礼儀も正しく常識人で、言葉も敬語。いつか友人が、あの人は姉に髪と耳を弄られたとか言っていたのを思い出す。


そんな生徒会がこのテーブルに大集結。
あぁもう大変。
あはは現実逃避もしたくなるわ。



「純ちゃん大丈夫ー?」
「大丈夫じゃないってか何でお前はそんな呑気なんだ」
「えーだって関係ないじゃん?」


はぁ…と溜め息を吐きつつ下を向いた瞬間、凄まじい悲鳴。


「んっ…、こっ!…ンの野郎っ!!」


ゲシ、という音と共にゆくえが口を制服の袖で拭いつつ会長に蹴りを入れていた。
そして会長はそれを可憐に腕でガードして避けた。

「おっ俺の…!」
「ファーストキスか?だったらハジメテが刺激の強い深いので悪かったな」

どうやら、会長にディープキスをされたらしいそして反逆は蹴り、しかし受け止められる。
顔を真っ赤にして何かを叫んでいるゆくえは何か色々可哀想だけど、それ以上に君のこれからが心配だな。



「まぁ又相手してやるよ、お前面白そうだしな」

会長はそう言って、お怒りの副会長と楽しげな書記、溜め息を終始吐いていた苦労人であろう会計を連れて生徒会専用席へ去って行った。


「純!何で助けてくれなかったんだよ!」
「えぇー」

そう来ますか。
唖然としていた周囲は、やがて我に返ったのか野次を飛ばし出した。

「俺そんな度胸無いよ…」
「うぅ…俺のぉ…」

あぁ何か疲れてくるな…。
横で項垂れているゆくえを何とかスルーし、やがて食堂を後にした。
途中で郎はフラっと何処かへ消えたが、いつもの事なのでスルー。

それから、俺はゆくえにずっと付き纏われ、どこへ行くにも一緒になってしまった。
お陰で視線が痛いのなんの。



俺これからどうなるんだろな…。






















とある一室、その場所は前まで『第三音楽室』として利用されていた場所だが、今では誰も使われていなく閑散としている。
それというのも、この場所は“呪われた音楽室”と言われており、授業中に窓ガラスが割れたり、機材や楽器が落ちたりという奇怪現象が起こった為、封鎖された場所である。

薄暗い中、左手に痛々しく血の滲んだ包帯を巻いている界がピアノの前に座っている。

そのピアノには“S T E I N W A Y & S O N S”の文字と、文字の上の中心部にはマークが綺麗に彫られていた。
高だか高校生の授業に使うようなピアノではない事は明らかだ。

しかし誰にも使われていない今、ピアノカバーの上には埃が溜まっていた。


―――ポーン

“ド”の音が防音の効いている室内に響く。
使われていなくて放置されていた手の施しを受けていないピアノの音、とは思えない程に綺麗で澄んだ音だった。


「…」

ふと、界は音楽室の入り口に凭れかかっている、黄色に近い金髪を持つ青年に視線を寄越す。
視線を受けた青年―――古ノ谷郎は、近付いてくると座っている界を見下げた。


「左手…怪我してんじゃん」
「大した事無い」
「ピアニストだったんだろ」

郎の言葉に、界は血の滲んだ包帯が巻かれている左手を目の前に翳し、凝視する。

(ピアニストだったから…大事にしろと?)

無意識の内に感傷に浸っている事に少し驚きつつ。

(とっくに俺の手は穢れている)

暫く見つめ、ふと眼鏡の下で自嘲気味に笑みを零し、手を下ろす。






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