03
「ってなワケで、よろしくな!」
「じゃぁ、倉持君の席は…山田君、手上げてくれないかな?」
言われて素直に従うと、じゃぁその後ろの席ね、と指定された席まで歩いてくる倉持の姿は、さながら歩く百合だ。
クソ、俺の最高席を取ったのはこいつだったのか。
「お前が山田か?俺ゆくえっつーんだけど、山田何て言うんだ?」
席に着くなり、早速話し掛けて来る。
HRは終わったらしく、教室を出て行く際にチラリと此方を見た宇美先生の顔は笑顔だった。
大よそ、倉持がさっそく俺に話しかけているのを見て安心したんだろう。
「純…」
「へぇ、純って言うのか!じゃぁ…ジュンジュンとかどうだ?」
何の話だ。
いや恐らくニックネームだろうが、今すぐやめて欲しい。
転校生倉持ゆくえは、必要以上に五月蝿い。
「ジュンジュンとか止めろ…普通でいい、普通で」
「ちぇっ。じゃぁ純って呼ぶからゆくえって呼べよ!」
最早命令形。
友達の作り方教えてやろうか、こいつに。
チラ、とほぼ無意識に隣の荒井世を見た。
机の上に置いていた手を握り拳にしていて、チラ見した俺でも分かるくらいに、何かに耐える様にその拳へ力を込めていた。
体調が良くないんだろうな、大丈夫か。…しかし俺は気遣ってやるほど良い奴でもないのでスルー。
やがて教科の先生が入って来て、授業は通常通り開始した。
「なぁ、あいつスゴイよな」
只今午前の授業が終わり、皆いそいそとそれぞれ行動する。
食堂へ行くものが大半だろうが、その他にもコンビニや購買まであるので、本当にこの学園は『学校』と呼ぶべきなのだろうかと疑ってしまっても仕方ない。
「なんつーか、もう生徒会入りとかちょろいんじゃね?」
「俺聞いたんだけど、倉持って頭も良いし家柄も良いからS組決定だったらしいんだけど、本人がB組がイイって言ったらしい」
「何でわざわざ?俺らを見下したいのか?」
少々アンチ方向に行きかけたが、まぁ流そう。
話し掛けてきたクラスメイトとも友人とも言うべきこの2人。
荒樋健太(あらひけんた)と橋本啓太(はしもとけいた)。
健太は俺と同類…いわゆる平凡組で、啓太はそのワンランク上の少々美形組。
俺の行動はいつも、ほとんどがクラスの違う郎と一緒だから、この2人はクラスで話すか会って話す、くらいだ。
「今も囲まれてんねぇ」
「はいはい人気者人気者〜」
倉持…いや、ゆくえは今クラスメイト数人に囲まれていて、質問攻めやら食事のお誘いを受けている事だろう。
俺も恐らくそろそろ来るだろう郎といつも通り購買へ行こうとした。
「純!」
…が。
何故にその人気者ゆくえ君からお声が掛かるのか。
「一緒に食堂行こうぜ!つーか連れてってくれ!」
「…」
痛い痛い。
何がって視線が。
そうだよ、何で俺なんだよ皆誘ってくれてんじゃんよそっち行けよ。
「…うん、分かった」
反論出来ない俺オワテル。
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