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やがて遠方から光った何かが飛んでくるのを見つけたジョーカーは、その何か―――ナイフを弾き、ピエロの仮面の下で口端を吊り上げた。

「さーて、お出ましか」

物騒なゴングと共に、異変に気付いた3人もそれぞれ動き出す。
向かって来たのは闇夜に紛れやすい黒尽くめの刺客。

1人で数人を相手にしながらも、『Reveal』という組織の力量を図ろうとする。
元居た場所から随分と離れた頃には、イードも合わせ5人ともが散り散りになっていた。




デーモンは途中で合流したフラウド、ストレインジと共に次々と向かってくる刺客を相手にしていたが。

「手応えがねぇ…」
「捨て駒でありますか」

本来戦闘向きではないストレインジまでもが感じるその違和感は、相手の力量の呆気無さだった。
少し手を加えればすぐに潰れ、又スピードも遅く、戦闘慣れしていないようにも思える。
しかし倒しても倒しても一向に減らない数から、様子が可笑しい事に気付いた時には既に遅かった。

「舐めたマネしてんねぇ…」

そう呟いたのは、3人と合流し、イードだけ離れているこの状況に逸早く気付いたジョーカーだった。




























目の前で何も仕掛けず身動きもせず、只木に凭れかかってこちらの様子を窺っているようにも見える人物に、イードは仮面の下で眉間にシワを寄せた。

「…目的は」
「そうだね、教えてあげるとすれば僕の…いや、僕達の目的は君でね。何でも上の奴等が連れて来いと五月蝿いのだよ。―――死神君」

おどけるように肩を竦めた相手の容貌は、一言で言えば“変”だった。

全身真っ黒であるイードが言える事では無いのだが、目の前の男はジャラジャラと鎖やらアクセサリーを付けていて、どうにも戦闘には向かない格好だ。
モノクロをモチーフとした、髪には白金-プラチナ-のメッシュを入れていて、ドピンクの眼鏡をしている。
分かる人には分かるだろう、俗に言う“ヴィジュアル系”の格好だった。

それに付け加え、口端を上げてニヒルに笑う姿は、まさに“変”だと言う以外なかった。

「出来ることなら穏便に済ませたいものでね。僕としてもこの格好を汚したくはないし、セットが崩れるのも避けたい所だけど……まぁ、全身真っ黒の不気味な君に、そんな僕の気持ちが分かるはずもない…か」

ちなみに、君のお仲間は今頃捨て駒達と楽しくやってるよ。
ひたすら1人で喋り続けた末、男は凭れていた木から身体を離し、組んでいた手を解いた。

(来るか)

「僕に、大人しく連れて行かれる気は?」

押すようにしてそう言ったのに対して、イードは返事代わりに短刀を構えた。
それを見て少し目を細めた後、溜め息を吐いた男。

「そう、残念……。格好は気に入らないけど、そのハスキーな声は僕好みだったんだけど、ね!」

言葉と共に地を蹴り、向かってくる…と思うと男は突如上に跳んだ。
予想外の行動に少し呆気に取られてしまったイードは、次の瞬間出されたものへの対応が遅れた。

(……!)

それなりの高さに跳んだ男は、その状態からワイヤーのようなものをイードへ投げ付け、腕を縛(いまし)めた。

「さぁて……―――お遊戯の始まりだ」

不敵に笑んだ男は何かを押した。

「―――う゛ぐあぁッ……!!」

瞬間、ワイヤーから強力な電気が流れ、腕に焼け焦げるような痛みが走った。
崩れそうになる身体をかろうじで支え、木の上で愉快そうに此方を見ている相手へナイフを投げた。
それは軽々しく避けられたが、同時にワイヤーが解かれた。
その隙を狙ってイードは男の着地地点向かう。

―キンッ、と金属のぶつかり合う音が木霊する。

「電流受けて立ってられるとは……。ま、噂だけの男じゃないってのは分かったよ」

互いに後ろへ一旦飛び退き、体勢を整える。

「…本気で行くよ」

言うなり、突如イードの視界から消えた。

(早い)

…と思うと、背後から小型ナイフが飛んできた。
それを弾きながらも、しかし目前に迫っていた相手と近距離戦になった。
左右上下斜めと次々に出される振りや突きを全て上手く受けながら、時に此方からも仕掛ける。
絶え間ない金属音がひたすら静かな森に響いた。







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あきゅろす。
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