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本心(綾→くく)
※少し捏造してます



いつまで我慢するつもりですか。
気付いているのは、きっと教師達と、六年生と、五年生の一部くらいでしょう。
それでも私は知っています。

「一番に、なりたく無いんですか?」

その要素を十二分に持っている久々知先輩は、優秀ない組に籍を置けども、友人である変装名人の影に身を置き、二番手以降に甘んじていた。人好きのする柔らかい物腰に、天然からくる突拍子もない言動で周りを和ませるこの人の正体が、実は五年生の誰より、鉢屋先輩より強い忍たまである事を、時として六年生をも脅かす存在である事を、知る者はほとんどいない。

「俺はやりたい様にやってるよ。不満なんてこれっぽっちだってないさ」
「嘘です。物足りない、と顔に書いてありますよ」
「え、そうか?」

参ったな、と久々知先輩。
貴方はいつも本心を隠しているんですね。忍者にとって当たり前の事と言えど、私は悔しかった。本心を隠す事に関しては負けていないこの私が、こんなにも貴方を知りたい、知りたいと、本心をさらけ出しているのに。

たっぷりと嫌みの念を込めて下から睨み付けると先輩は困ったように笑い、一つだけ本心を見せてあげる、そう言って私の耳元で小さく囁いた。

「他人の尺度で計った順位には興味ないよ。物事の価値っていうのは、自分で決めるんだ。俺はね」

貴方は他人の評価など全く気にしていないのですね。そしてきっと、私の存在も然して気にしてはいないのでしょう。
きっとその言葉に他意など無い。彼は天然独特の考え方をしているだけだ。
私は知っています。貴方は全てを投げ出してでも手に入れたいものなど、今はまだ有りはしないのでしょう。だからまだ、自分自身をさらけ出す機会を伺っているのですね。影の立役者に甘んじているのですね。
貴方が全力で欲するもの。願わくばその対象に、私はなりたいのです。

今はもう遠退いて小さくなった久々知先輩の背中に向かって呟いた。

「私も…自分で決めました。貴方の価値を。私の全てを晒け出すに値する人である、と」


私は、一番になりたい。
貴方の、久々知先輩の一番に。





end.





もし兵助が一番強かったらという妄想が大好きです。贔屓ばんざい。



09,3,11



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