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渦捲く(竹くく)






出会ったのが四年前。特別な感情に気付いたのが二年前。想いが通じ合ったのが半年前。
過ごしてきた全ての時間が思い出に変わる。今この瞬間すら、過去になって行く。




「何か、変」
「何が?」
「んんー、分かんない」

散々絡まりあった事後、一つの布団で寄り添い暖を取る。さっきまで思い返すのも恥ずかしいコトをしていた筈なのに、今ではもう過去の事になってしまっている。時間てやつは、考えれば考えるほど不思議で掴みどころがない。
切っても切り離せない存在の時間ってやつは、いつだって側で黙って見ている。そして時に残酷なほど無情に過ぎ去る。

「ふぁ…ぁ」
「眠いのか?はち」
「んー、だな。眠い」
「もう寝よっか」
「そうだな」
「お休み、はち」
「お休み、兵助」

静まり返った部屋の天井を兵助はぼんやりと一人眺める。
早くも寝息を立てるはち。ああ、はちとお休みを言い合ったのも、もう過去の事になってしまった。どんどん増える過去。過去が膨らんだ分だけ、得たものがある。勿論失ったものも。

「何て言うんだっけ」

この気持ち。
心臓に、あるはずのない隙間が空いて風が通り抜けるような。隙間に有るべきものが、足りない。

「ああそうだ、寂しい、だ」

寂しい
寂しい
離れないで
置いてかないで

いくら想っても想っても
後から後から過去になってしまって
怖い
はちが過去になったら
怖い

それでもはちが好きすぎて
二人で過ごした過去を作りたくて
胸が潰れそうだよ








微睡みの中、はちの声が聞こえた。夢か現実か、知る術は無いけれど、俺は酷く安心した。

(ちゃんと、ずっと側にいるから)




end.


09/3/11




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あきゅろす。
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