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負け犬(タカ久々)
※二人とも卒業後









「…どうしたの?最近積極的だね」

「いーだろ別に」

いつもなら覆い被さってくる男に、今日は自分から跨って求める。
何故だろう、最近はいくら抱き合っても足りない。忍務が無い日の夜は殆どこうして斉藤の元を訪れる。



ここの所、とみに考えてしまう自分の未来。
いつ死ぬか分からない。もしかしたら明日死ぬかもしれない。だから、その時が来たら、良い思い出ばかり思い出せるように。後悔など無いように。全ての事に力を振り絞って生きたい。

そう、例えば。
こうやって全身全霊でこの男、斉藤を求めて、それでこの愛しい想いが伝わるならば、どんなに格好悪く浅ましい姿を晒そうと、決して後悔は無いのだ。

「俺にはお前だけだよ斉藤」



学園を卒業して、裏世界の最前線で動いて初めて、自分には大切な人や物が思っていた以上に多かった事に気付いた。
親友、級友、恩師、先輩、後輩、家族、生家、自分自身。それら全てが大切で、だから守りたくて。
でも、気付いてしまった。それら以上に大切に思っている存在に。


斉藤タカ丸。


他の人間に比べて出会ったのなんて一番最後だし、一緒に過ごした時間なんてたかが知れてる。
なのに、感じる愛しさや心地良さは誰よりも大きくて。与えられる愛情に甘えて、溺れて。
手離したくなくて、いつまでも関係を続けている。

ああでも、どうか、ズルズルと堕ちていくだけの俺を、どうか許して欲しい。いつかきっと会いたくても会えなくなる日が来るから。
未来は選べないのだ。自分で選択できるのは生きる過程だけだから。
だから俺はこうして斉藤と共に在る事を自分で選択した訳だけれど。


俺は死期が近いのだろうか。じゃなかったら何故こんな事ばかり考えてしまうんだろう。






「俺も、兵助くんがいれば他には何にもいらないよ」





攻め立てられて熱くなっていく吐息に、もうそんな事どうでも良くなってしまったけれど。





END.











とある唄を元に書いたもの。

09,5,22

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あきゅろす。
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