[携帯モード] [URL送信]
フェティシズム(鉢くく)
※現代。大学生くらい
※鉢→久々かもしれない
※三郎の性癖をねつ造
※下らなさ100%







やべ、すげーイイ。

帰宅ラッシュを過ぎ閑散とした夜の駅。俺はだらしなく口を半開きにしてある人物に見惚れてしまった。
ベンチに座る、学生風な一人の男。ぼうっとしているのか、俯いてはいるがこちらからはその横顔はハッキリ見てとれた。

ごくり。息を飲む。
言いようの無い感覚が体を蝕む。







俺には昔から変な癖というか、フェティシズムがある。俺の好きなもの、それは、頭の形。

頭部の大きさや、後頭部から首にかけての曲線、横顔に限って言えば鼻筋や顎のラインまで。
これといった定義は無いから説明は出来ない。が、間違い無く俺はそういった部分にエロティシズムを感じる。自分で言おう、変態である、と。


持論はともかく。
横から見た彼の頭は正に俺の理想にピッタリだった。どストライク。
もっと見ていたくなって、彼が俯いているのを良いことに、隠れる気なんかこれっぽっちも無く堂々と観察する。



…ああホント良い。
鼻筋がスッと通っていて、鼻、唇、顎にかけてのそれぞれの距離感がまるで黄金比が如く並んでいる。
平らでもない、丸過ぎもしない頭頂部から伸びる黒い毛髪はトップが少し短めで毛先が自由奔放に跳ねている。
お洒落になんか興味無いとでも言うようなあの黒いくせっ毛が頭の形に合ってしまっているから堪らない。
その気の抜けた感じが、彼のお洒落にも見えた。似合い過ぎている。


更に、彼が纏う静かで気怠い雰囲気は、白い肌と白いTシャツ、黒い髪のコントラストがどこか排他的に感じさせ、その様はまるでモノクロフォトアートを思わせた。

ああ、むず痒い。これはマズい。
体中を電気みたいに走る欲望が抑え切れない。世の中色々な性癖があると言えど、たかが横顔に悶絶するなど、この地球上に何人存在するだろうか。

ああ、声を聞きたい。話をしてみたい。
どんな声でどんな言葉を紡ぐのか。どんな顔で笑うのか。どんな音楽を聞いてどんな映画を見たらあんな風になれるのか。
出来る事ならせめて、正面から気の済むまでじっくり眺めたい。


声掛けてみようか。連絡先を聞いてみようか。何とかして彼の認識内に入り込みたいものだ。
生まれて初めてのナンパが男相手とは、さすがの俺も予測不能だったな。


余りにガン見していたせいだろうか。ふと彼がこちらを向いた。視線がぶつかる。どこまでも深い黒色の瞳だった。

「何か用?」
「あ、いや…別に」

思いがけず彼の顔を正面から見据える。
驚いた事に、寸分の狂い無く左右対称の端正なその顔の作りも、俺の理想そのものだった。


挙動不審な俺に彼は何かを言いたそうにしているが、正直俺はそれどころではない。この人物が今ここに本当に存在しているのか、触って確かめてみたかった。そのくらい夢見心地とでも言うべきか。
彼の顔に手を伸ばしそうになるのを必死で抑えつけ、平静を装う。

まるで恋する乙女のような自分に戸惑いつつ、俺は連絡先を聞き出す方法を必死で探した。





END..






私の趣味です


09,4,19




[戻る]



あきゅろす。
無料HPエムペ!