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依存している(竹くく♀)





嫌で嫌で仕方なかったのに、人間てやつは何て単純なのだろう。
例えば、尊敬なり恋情なりを抱いている相手が自分の短所を好きだと一言言えば、たちまち自らもその短所を好きになってしまうんだ。



今の俺は正にそれだろう。何故自分は男に生まれなかったのだと嘆く一方で、女の自分を精一杯出して、はちに愛されたいと心と体が叫ぶ。

煩わしくて堪らなかった乳房の膨らみも、はちの手で包み込まれれば快楽を求めて動きを追うばかり。
抉り取ってしまいたかった膣さえも、抜け目無くはちの熱を受け入れる為の準備をする。
こんな時だけ甲高くなる声も、全部。
久々知兵助という人間を形成する全てが、疎ましくて仕方ないのに。
はちがそれら全部を好きだと言うから、自分もそんな気がしてきてしまうのだ。

可愛いと、好きだと仕切りに口にする、そんなはちだからきっといつか言われると思ってた。
その言葉に俺は驚かなかった。

「忍びになんかなるなよ」

痛い程に抱き締められて、悲痛に囁くはちの声を聞いた。それは、この学園に在籍する以上絶対的に禁句とも言える言葉だった。けれど俺は驚かない。ああやっと言ってくれたか、とさえ思う。

「忍びなんかやめて、俺の側にいろよ」

肩に少し、水滴が落ちた感触がした。

一般人としての未来を何度想像したことか。女として産まれながら女を捨てて踏み入れたこの世界。でも結局は捨て切れなくて、はちを好きになってはちに愛されて。卒業が近づく程に「普通の自分」というものを考える回数も増えた。
三郎や雷蔵はこんな俺達を怒るだろうか。呆れて笑い飛ばすだろうか。それは少し、辛いかもしれないな。
だけど答えはもう出ていた。

はちが、俺の全てなんだ。例えこの学園で過ごした数年もの時間を否定することになったとしても、だ。

「ならない…俺、忍びになるの、やめる…だから」

だからずっと側にいさせて。その言葉を言い切る前に唇を塞がれた。熱く柔らかい唇に飲み込まれた言葉は、呼吸器官を通じて直接はちに伝わったらしい。




きっと俺は、何もかもはちが言った通りにするに違いない。あの声が紡ぎ出す言葉に、何一つ逆らう術も理由も無いのだから。

それこそ、死ねと言われれば死んでしまえるほど、に。

(はちはそんなこと、言わないけど、さ)



好きで好きで好きで
お互いがいない未来など
我々には不要なのだ。




END









強さや逞しさや包容力やなんかに縋ってしまうかもしれない、と。


09,4,5




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