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温かいレモネード 1







先刻まで部屋に溢れていた甘い声は、静かに鎮まっていく










「もー無理」
「歳だねー」
「…そういうこと言わないでくれよ」
「あはは、だってホントじゃん」



私とクロツグさんは、かなりの年の差

どれくらいかと言うと、クロツグさんの息子と私は同い年で尚且つ幼なじみ


「こっちおいで、トキ」
「えー、何で…?」


ベットの端っこから、ズルズルと移動する
クロツグさんが広げた腕の中に飛び込んだ
素肌が生暖かくて、気持ちが良い
顔を胸に埋めると、「髪がくすぐったいな」とクロツグさんが笑った

優しく顎を掴まれて、そのまま上に向けられる
…クロツグさんのキスは、優しくて甘くて、大好き


「ん、ふぅ」


口付けは何時しか深くなって、それと同時にクロツグさんがやんわりと私の胸を揉む








クロツグさんは、奥さんも子供も居るから、私達は所謂不倫という関係


私がクロツグさんを好きになり、始まったこの関係

後悔は…してない

クロツグさんの事は、小さい頃から好きだったし、そして勿論今も

多分これからもずっと、ずっと好きだろう













「ぁ、あんっ…ひぁ!」


激しくも優しく、甘く愛されているこの瞬間、「少しでも私の気持ち、伝わってるのかな…?」って思う


クロツグさんと向き合う形で膝の上に座らされる
腰をしっかりと固定され、下から突き上げられる


「トキっ…」

「ふ、あ、あぁっ!」


いやらしい水音がする
耳を塞ぎたいけど、私の腕はクロツグさんの首に回している
恥ずかしくてたまらなくて、クロツグさんの肩に顔を埋める


「トキ」

「ぁ…ん、ぇ?」

「下、見なさい」


クロツグさんの、激しい律動に耐えながら、下に視線を向けてみる


「繋がってる、だろう?」

「…っ!」


ああ、体だけじゃなくて
心も繋がれたら良いのに


私の一番奥を、力強く突かれた
頭の中が真っ白になる
薄れゆく意識の中で、体の中に広がる熱いものを感じた



























まだ痺れが取れない体

「………うぅ、疲れ、た」

「私もまだまだ若い、ということだな!」

「…気にしてたの」

「まぁーなー」


クロツグさんが、「はい、お疲れ」と悪戯な笑みを浮かべて、温かいレモネードをくれた

疲れた体に、染み込んでゆく…


「美味しい…」

「そうか、良かった」

「クロツグさんって何時もレモネード入れてくれるよね、好きなの?」

「何言ってるんだ、トキが好きって言ったんじゃないか」

「えぇ?言ってないよ〜。でも好きだけどね、レモネード」

「………覚えてないかー」

「…いつの話?」

「トキが小さい頃さ、風邪引いた時…」

「………あ!」


私が小さい頃、確か7歳か8歳くらいの頃、風邪を引いて寝込んだことがあった

風邪も治りかけた頃、もう大丈夫だろうと、両親揃って家を空けた時があった

風邪の苦しさは殆どなかったけど、両親が居ない寂しさに泣きそうなくらい落ち込んでいた

そんな時、突然クロツグさんが家にやって来て…



「あの時は、本当に嬉しかったなぁ…」

「私の姿を見た途端に泣き出してね、びっくりしたよ」

「だって寂しかったんだもん」


泣きじゃくる私を見て、クロツグさんは慌ててレモネードを作って持って来て、「これ飲んで落ち着きなさい!」って


「あのレモネード、風邪薬か何か入ってたの?」

「いや、入れてないが…何で?」

「あれ飲んだら直ぐに風邪治ったんだもん」


あの時、何回もレモネードをおかわりしたなぁ
美味しくて、美味しくて、何回も飲んだ


「おかわりおかわりって何度も飲むもんだから、トキはレモネードが好きなんだなーって」

「………そうだね、好きよ………クロツグさんが入れたレモネードは」

「…トキ……」

「?」


唇に柔らかい感触、クロツグさんの唇…そのうち、舌が絡み合う


軽くリップ音を立てて、名残惜しくも唇が離れた




「…甘酸っぱいな」

「レモネードだしね」




静かな部屋に、今度は笑い声が溢れた











温かいレモネード






「また入れて欲しいな……」

「トキの為なら、何度でも入れてあげるぞ」




…嗚呼、なんて甘酸っぱいんだろう














2009*03*10
たまには甘く、書いてみた



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あきゅろす。
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