valentine 2009
「ヒョ〜ウタさんっ！」
「トキちゃん？何か僕に用かな」
「ハッピーバレンタイン！」
トキちゃんの手には小さな小包
今日はバレンタイン
女の子から男の子へ愛を囁く日
まさか、まさか…ひそかに想いを抱いていたトキちゃんから貰えるだなんて！
「有り難う！…これは、義理、かな？」
「やだ！本命ですよ！」
「ホント？！！」
「ホ・ン・トですよ！ほら、早く開けてみて下さい！」
本命だなんて…
僕幸せ過ぎて眼鏡割れそうだよ！
「楽しみだなー…まさか手作りとか、」
「どうです？力作なんですけど…」
「あ、うん…これは凄いや…」
これ、化石だよね
「早く食べてみて下さいよ〜」
「食べ…ッッ？！」
「早くぅ」
トキちゃんが目をうるうるとさせながら僕を見詰めてくる…
あ！そうか
僕が化石好きだから、化石デザインのチョコなんだ！
「……もしかして、ヒョウタさん…食べたくないとか…？」
「ううん！そんな事ないよ！じゃあ、有り難くいただきまーす！」
ガリッ
「ヒョウタさん歯が抜け………ほら、下の歯が抜けたから屋根に投げなk」
「…そうじゃなくてね…これやっぱり本物の化石じゃないかーっ！！！！」
しかも抜けたんじゃなくて折れたんだよ！前歯だし！
「ど、どうしてくれるんだい！」
「いやぁ…ホントに化石食べるだなんて……ねぇ？普通夢にも思わないでしょ」
「いやいやいやいや！おもいっきり食べろって言ったじゃないかぁ！」
「ヒョウタさんが人の言いなりになるような人だとは…幻滅です」
「トキちゃん酷いよ！僕の純情を踏みにじってさ！父さんに言い付けちゃうからね！！！」
「待ってノビ太さん！」
「最後の最後まで酷いよ！うわああーーーん！！！」
もういいよ！
二度と恋なんてしない…
僕の恋人は化石だ！！！
「待てっつてんだろ眼鏡！！」
「グファ！！！か、化石が顔に…！」
ズザザザ…と地面に転んだ僕
軽く交通事故だよ
「……もうっ！ノビ太さんたら！……じゃなくて、ヒョウタさんたら…待ってって言ってるじゃないですか」
「うぅ…だからって化石を投げ付ける事ないじゃないか…」
「ヒョウタさんが悪いでしょ？」
「……もう…そういう事でいいよ……」
僕はよろよろと立ち上がって、体に付いた砂を払う
トキちゃんの化石で軽く５メートルは吹っ飛んだかな
「トキちゃん…もう…お願いだから…帰ってよ…」
もはや、バレンタインに何の期待も無くなったからさ
「え、これからチョコあげようと思ったのに…」
「化石、要らないから」
「だからチョコだって…さて！ここで問題です！ヒョウタさんにあげる筈のチョコは何処にあるでしょう？」
「えぇ…探すのかい？」
「化石探すの得意じゃないですか」
「うーん……」
トキちゃんの事だから…何処か難解な場所に隠したに違いない
炭坑の最下層？
もしかして父さんのズボンのポケット？
ま、まさか………さっきの化石の中とか？
「あと10秒で見付けられないと、ヒョウタさんが死ぬ事になります」
「何でだい！！」
「ヒント、私」
「トキちゃん？！」
えー…トキちゃんが持ってるのか…？
何処にあ………るんだ……ろ
「…トキちゃん…あのさ…」
「見付けた？」
「…………あの、えーっと………胸にですね…あるのは何かな…？」
「正解！私の胸の谷間に挟んであるのがチョk」
「何やってんの！！！」
今日のトキちゃんはおかしい！おかし過ぎるよ！！！
何時もはこんな事しないよ！
でも…
「ささっ、どうぞ召し上がれ？」
「召し上がれって………」
僕ってやっぱり男なんだな
駄目だって分かるのに…
一応辺りを確認してみる
よし、誰も居ない
「じゃ……えと、貰うね？」
恐る恐るトキちゃんの胸に手を伸ばす
「あー…ダメダメ！口で取って下さい」
「…」
僕を殺す気？
ていうか、かなり美味しいよねこの状況…
「溶けちゃいますよ、チョコ。私の体……凄く熱いから…」
トキちゃんの顔が真っ赤だ
…気が遠くなってきた
今日のトキちゃんがどこかおかしいとか
化石かじって歯が折れた事とか
もう、どうでもいい
「早く」
「……い、いいんだね？僕、食べるよ」
「はい」
トキちゃんの胸に顔を近付ける
嗚呼、今日は一生忘れられない日になる…
バレンタイン万歳！！！！！
っていう、夢を見た
勝負処の一番奥の席で僕は倒れていた
「ヒョウタ、どうしたんだ？死にそうな顔して」
「実際死にたいんだよ」
デンジ君ほっといてくれよ…
君みたいにモテる人には分からない事だよ…
「そうだ、今年のバレンタインのチョコ…女子達全員逆チョコ待ちだとよ」
「………そ」
「…面倒だよなぁ」
いっそ、貰うよりあげる方がいい
2009*02*14 valentine!!
ヒョウタファンの皆様に土下座します
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