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たった一秒でさえ、惜しい




君の側を離れるのが、こんなに辛いだなんて









君は常に高みを目指していた
僕なんか足元にも及ばないくらい、強くなった君

旅に出ては強くなる

沢山の人に敬われて
沢山の人に愛されて

それは僕と付き合ってからも変わらなくて


今日も彼女は旅に出る
明日も彼女は旅に出る
明後日も明々後日も…





「ヒョウタ、私行ってくるね」

「うん、気をつけてね」


笑顔で彼女を送り出す
それが僕の最大の仕事

彼女に無理を言って恋人にしてもらったのだから、それは当たり前の事


「ヒョウタ、何か元気ないよ…?」

「え、そんな事ないよ?!」

いけない、彼女が旅に行ってしまうのが嫌で、顔が自然と沈んでいたのか

「僕は大丈夫!全然元気だよー、今日も炭坑で一杯働くぞー!」



そうでもしてないと、淋しくて切なくて気が狂いそうだから



「…やっぱりおかしいよヒョウタ」

「そんな事ないって!…ほら、大丈夫だからいってらっしゃい!」

「ヒョウタ、私…今日旅に出るの止め」

「いいから行ってよ!!」


「ヒョ、ウタ…」



思わず声を荒げた
気付いた時にはもう遅くて



彼女は、「……うん、行ってくる」と言い残すとポケモンの背に乗り、空高く舞い上がった

彼女は今にも泣きそうな顔をしていた

これが僕の見た彼女の最後の顔かもしれない、と直感的に思った























クロガネシティに夜が訪れる
暗くて寒い冬の夜が




彼女と一緒に居れば、こんな夜も明るく暖かいものに変わるというのに

炭坑での仕事を終え、帰路につく


空に浮かぶ星はキラキラと輝いて、まるで彼女みたいだ…


「…うっ…く…」


何を見ても彼女の事しか思い浮かばない

涙がぼろぼろと目から落ちて、闇よりも黒い染みを地面に作る


「…僕はっ……馬鹿だ…トキが好きなのに……トキの邪魔ばかり」

存在、態度、感情、全てが彼女の足手まとい

きっと今の僕は最高に恰好悪い







「私も好きよ、ヒョウタが大好き」


後ろから声がした

一番、一番聞きたかった声が



「トキ…ッ?!」




そこにはトキが居て


慌てて涙を拭う


「ヒョウタ…」

トキが僕を抱きしめた


力強く…そして、優しく


「トキ…」

「ごめんね、ヒョウタ…淋しい想いさせた」

「…ち、違うんだ…僕が悪いんだ」

「それは違うよ」

トキの手が、僕の背中から顔に移動した


「私が悪いの、ヒョウタが此処に居て、いつも送り出してくれるから、気をつけてねって…言ってくれるから…」

消えるような声で「だから、甘えてたの…」と彼女は言った

「僕、トキが彼女で居てくれたら、それだけで…」

「それは、私も同じ」

「え、」

「もう旅には行かない」

「だ、ダメだよ!旅はトキの、」

「もし行くならヒョウタも連れて行く」

「………トキ…」

「これ以上ヒョウタには迷惑かけない」


今までにないトキの真剣な顔に、元々惚れているのに、更に惚れ直してしまった


「トキ」

「何?ヒョウタ」

「僕、君が側に居てくれないと駄目なんだ…側に、ずっと居てほしい…」

折角想いを伝えたのに、何だか弱々しいなぁ僕

そう思う僕と違ってトキは嬉しそうな顔をした


「……ねぇ、今のってプロポーズみたいね」


確かに


「…そう受け取ってくれても構わないよ?」


トキは更に嬉しそうな顔をした









たった一秒でさえ、惜しい







これからは一時も離れずに側に居よう








2009*02*11
意味不明な文章、ホント申し訳
だけど、ヘタレなヒョウタが書きたかったのです



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あきゅろす。
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