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戦国無双3
虎が見る夢(清宗、Rー15)
(2月22日、にゃんにゃんにゃんの日企画)



疲れたな、と思い目を閉じると、体が奇妙に重くなり意識が泥の中にでも沈んでいくようだった。うつらうつらとした意識は、まだかろうじて覚醒しているような気もしたけれど既に眠りの中にいるような気もした。ともかく奇妙な感覚だった。目を閉じているのか開けているのかも分からない。
すると、何故か宗茂が現れた。現れた、と言うよりはそこに「いた」という方が正しいのかもしれなかった。そして、これまた奇妙なことに宗茂の頭には三角形の猫の耳が生えていた。猫の耳は、宗茂の髪の色とは異なり、真っ黒だった。俺は宗茂に猫の耳があることよりも髪の色と耳の色が何故違うのか、そんなことを考えていた。
やがて宗茂は四つん這いになった。本当の猫のようだった。腰の辺りでは耳の色と同じく、黒くて艶やかな長い尻尾がゆらゆらと揺らめいている。


「にゃあ」


それは紛れもなく宗茂の声だった。宗茂の涼やかな声が「にゃあ」と鳴く。
男で、それも上背があって、体の作りもそれは立派な人間が「にゃあ」なんて言えば何かの冗談だと思うに違いないが、俺はそんな宗茂をとても可愛いと感じた。
宗茂はじっと俺の目を見て、少しだけ首を傾げた。なんとなく手を伸ばしてみると、宗茂は嬉しそうに笑って差し出した俺の指を舐めた。心なしか舌がざらざらしているような気がしたが、それは宗茂の猫の耳と尻尾が本物の猫を強く想起させるせいだろう。
ぺろ、ぺろ、と味を確かめるかのように宗茂は舌を這わせた。いつもの宗茂ならそんなことはしない。それなのに俺は目の前の光景をおかしいだなんて少しも思わなかった。


「宗茂」


名前を呼ぶと、ふわりと笑った。どこか子供のような笑顔で、やっぱりいつもの宗茂ならありえないのだが感覚が麻痺しているのかそれもまた俺にとってはおかしいことでも何でもなかった。
宗茂はゆっくりと俺に近づき、もう一度「にゃあ」と鳴いた。


「喋れないのか?」


問うてみると、宗茂はゆるゆると首を振った。そして、甘やかな声で「清正」と俺の名を呼んだ。けれど、それ以外に何も喋ろうとはしなかった。何故だろう、と疑問に思ったが、唯一口にできるのが自分の名前なのだとしたらそれはとても幸せなことだった。少なくとも俺にとっては。


「おいで」


本当の猫に接するかのように言ってみると、宗茂は俺の首に手を回し、にゃあ、と鳴いた。艶やかな尻尾が変わらずゆらゆらと揺らめき、俺は何も考えずに尻尾に手を伸ばした。


「ん、……」


気持ち良さそうに宗茂は呻いた。それは、性的な気持ちよさを表す声だった。今までに何度も聞いている声だ。
猫は尻尾を触ると嫌がるものだが、宗茂の尻尾はそうではないのだろうか。腰から尻尾にかけてゆっくりと撫でると、腰がゆらりと動き、尻尾も同じようにゆらりと揺れる。
尻尾の付け根あたりの毛を撫で付けたり、逆に逆立ててみたり、と好きにしていると腕をぱしんと叩かれた。その艶やかな尻尾で。


「怒ったのか?」


宗茂は頷くだけだった。どうやら、好き勝手に遊ぶのは良くないらしい。とりあえず謝ってみると、今度は腕を尻尾でするりと撫でられた。


「許してくれるのか?」


そうだ、とでも言うように宗茂が鳴いた。
俺の名前を呼んだのは一度きりで、それ以降は鳴き声しか聞いてないのでふと、俺は不安になった。あれは聞き間違いだったのではないかと。何しろ今の宗茂は見た目こそ人間であるが、その中身は猫にしか見えないからだ。まるで、宗茂と猫がそっくりそのまま入れ替わったみたいだ。もし、そうだとしたら人の言葉を話す猫がいたりするのだろうか。考えてみると結構おかしい。思わず声に出して笑うと、今度は尻尾で二回、ぱし、ぱし、と叩かれた。余所事を考えるな、とでも言いたいように見える。


「ああ、悪い。なあ、名前を呼んでくれないか?」

「きよまさ」


名前を呼び、宗茂は俺の頬をぺろりと舐めた。動物が動物に親愛の情を表すかのような仕草だったが、俺は当然のようにその仕草に煽られてしまった。今の宗茂は狙ってそういったことをしているわけではない、と思う。あくまで推測でしかないが。
けれど間近にある滑らかな頬に触れると、宗茂は少しだけ唇を開いてみせた。微かに見える赤い舌がたまらない気持ちにさせる。
唇を塞いで、覗く舌に触れてみると、やっぱりどことなくざらざらした感じがして不思議な気持ちにさせられた。
宗茂は時折声を漏らし、その微かな喘ぎにも似た声はよく耳に馴染んだ声で、夢と現実の境界線が曖昧になってくる。


「っ、は……ぁ、」


背中を撫で、尻尾に辿り着くと、先程気持ちよさそうな声を上げていたあたりを擦るように撫でてみた。
案の定、宗茂の体はぴくんと跳ね、もどかしそうに腰がゆらめき始める。唇は変わらず塞いだままだったので、宗茂は切羽詰ったように苦しそうな声を上げた。


「っあ、……、う…」


いつもなら余裕の体を崩さない宗茂が既に余裕なく声を上げ、頬は赤く色づき、明らかに誘うような仕草を見せている。それを認識した瞬間、急激に下肢に熱が溜まっていくようだった。
宗茂もそうだろうか、と思いゆらめく下肢に手を伸ばし、そこに触れると、既に僅かに濡れた感触があった。尻尾を弄られるのがよほど気持ちよかったのだろう。


「気持ちいいのか?」

「ん、……きよまさ……」


ねだるようなその声に下肢に伸ばした手を動かしてみると、宗茂の体は耐えられないというようにずるずると崩れていく。すると、ちょうど口のあたりに宗茂の猫の耳が下りてきた。なので、何の躊躇いもなく舐めて、噛んだ。


「ふ、あ……ぁ、」


もう今にも達してしまうのではないかというような声だった。だが、宗茂の体が下のほうに崩れていってしまったため俺の手は上半身までしか届かなかった。
仕方がないので手は別のことに使うことにし、俺は足で宗茂の下肢を刺激した。そういえばまだ何一つ脱がせていなかったな、と思ったがまあいいかとさして気にならなかった。
着物の袷から手を差し入れ、肌を撫でるといつもは少し低めの体温は火照っているのではないかというくらい熱かった。少しだけ汗ばんでもいる。
しっとりとした肌に舌を這わせたくなったがどうにも体勢がよくなかった。結局、未だ宗茂が俺の上にいるのでいろいろとやりづらいのだ。
少し強引に体勢を入れ替え、宗茂を見下ろすと妙に潤んだ瞳に見上げられた。その時湧き上がったのは、このまま宗茂を滅茶苦茶に抱いてしまいたいという感じたことがないほどの凶暴な気持ちだった。自分で自分が信じられなかった。それなのに宗茂は求めるかのように俺に手を伸ばすから、理性とか、自制だとか、そういったものを全て忘れてしまいそうだった。本能と欲望だけの人間になってしまいそうだった。いや、これでは人間というより一匹の獣だ。頭も体もかっと熱くなり、正常な思考が失われていくようだった。
そして俺は、湧き上がる感情に逆らうことなく宗茂の体を思うままに撫でて、舐めて、貪った。宗茂は抵抗なんて何一つしなかった。ただ俺の名を呼び、それ以外は快楽を示す声を上げるだけだった。
それは、紛うことなく獣と獣の交わりだった。





*******





夢から覚めた俺は愕然とした。夢の内容ももちろんだが、何より夢の中の自分自身に愕然とせずにはいられなかった。あの自分は一体なんだったのかと頭を抱えたくなった。
だが、夢というのは見たいと願って見るのではなく、言わば勝手に出てくるのだからいくら頭を抱えたところでどうしようもないことも分かっていた。もう忘れよう、と思った。あんな自分は自分じゃない、俺は強くそう言い聞かせた。けれど、夢の中で見たこともないほど乱れていた宗茂の姿はそうそう忘れられそうになかった。口にできるのは俺の名前だけで、それ以外はただただ喘ぎ、泣いて、鳴く、宗茂。想像したこともなかったその姿は、確実に俺を狂わせた最大の要因だった。もしかして自分には何かおかしな願望でもあるのだろうか、と思ったが俺は宗茂にあんな姿は求めていないはずだ。しかし、絶対だとは言い切れない自分も分かっていた。なんだか、当分夢を見るのが怖くなりそうだった。





そして、奇妙な夢から数日後、俺は宗茂に会った。もちろん宗茂の頭には三角形の猫の耳はなかったし、ゆらゆら揺れる尻尾も見えなかった。
しかし、俺はつい、ありもしない尻尾を確かめたくなって宗茂の腰に手を回した。


「おい、清正…!」


珍しく慌てふためいた声を出す宗茂に構わず、俺は腰の辺りを撫でた。周囲に人はいないと言ってもいつ誰が来るか分からない。まだ陽も高い時間であったし、何よりここは外だった。室内ではない。
けれど俺は尻尾の名残を探すかのように腰から尻にかけてを撫で下ろした。


「っ、…ふざけるな……」


羞恥で赤く染まった頬は夢の中の宗茂を思い起こさせた。また、尻尾のあった辺りを撫でた瞬間の反応も夢の中での反応そのものだった。
だが、実際は今こうして触れている宗茂が本物なのだ。今、腕の中にいる宗茂が夢の中の宗茂に似ているのではなく、夢の中の宗茂がこの腕の中の宗茂に似ているのだ。


「早く、離れろ……!」


宗茂がそう言った瞬間、腹部に衝撃を感じた。なかなかに重いその一撃にようやく俺は我に返った。


「あ、悪い…」

「悪い、で済むと思ってるのか?ついに頭の螺子が飛んだかと思ったぞ」


いつもは自分の方が常識人で宗茂のほうが突飛な行動ばかりするというのに、今は立場が逆転しているようだった。どうも夢の印象が強烈すぎてよろしくないようだ。


「本当に、悪かった。ちょっと、夢が……」

「夢?」

「ああ」


もちろん夢の内容を詳細に語る気はなかったが、夢、と言った瞬間宗茂の顔色が少しだけ変わった、ような気がした。もしかしたら宗茂もなにかおかしな夢を見たのかもしれない。


「もしかして、お前も何か変な夢でも見たのか?」

「………いや、見てない」


そう言って宗茂はさっさと歩き出す。仄かに顔が赤いような気がしたが気のせいだろう。





そのとき、背後で猫がにゃあと鳴く声が聞こえた、気がした。振り向いてみたが、そこには何もいなかった。













夢は清正の無意識下の願望。自分の名前だけを口にし、自分のことしか見ない宗茂。
宗茂も同じ夢を見ている。もちろん、清正にかわいがられた猫として。宗茂も実は盲目的に清正に愛されたいと思っている。
とかいう後付け設定。


このあと爆発加藤さんに繋げたいのう…

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あきゅろす。
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