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戦国無双3
ねことあそぶ(就宗)



日なたに身体を横たえる宗茂は毛並みの良い猫のようだった。猫と言うには些か彼は大きすぎるのだが連想するのはどういうわけかどうしても猫なのだった。
元就は寝そべる宗茂の隣に腰を下ろし、戯れに彼の髪を一房摘んだ。柔らかく光を弾くそれはさらさらと指先から滑り落ちる。触り心地の良いそれがまた猫を思わせた。


「元就公?」

「ああ、起きてたのかい?」


問えば宗茂はそれには答えずに体の向きを変え、少し眠たそうに元就を見上げた。起きていたのかと思ったが眠っていたのかもしれない。


「眠っていたのなら悪かったね」

「いえ、いいんです」


そう言って起き上がろうとした宗茂を元就はやんわりと肩を押して元通りに戻した。不思議そうに見上げてくる宗茂に少しだけ笑みを浮かべると元就は柔らかな髪を再度ゆるゆると撫でた。縁側で猫を愛でる気持ちがよく分かるような気がした。


「どうしたんですか?」

「君は猫のようだと思ってね」


正直にそう言えば宗茂は合点がいったというように小さく笑った。そして気持ちよさそうに目を閉じてみせた。


「生憎、喉を鳴らすことはできませんが」

「はは、そこまでは求めていないよ」

「でも、あなたの手は気持ちいい」


目を瞑ったまま宗茂は言い、少しだけ元就の手のひらに頭を押しつけた。もっと撫でろとでも言っているかのようで元就は声には出さずに笑う。なんとなくやってみたことがそういう遊びのようになっているようだった。
さらり、さらりと髪を梳いていると先程よりも眠さが増したような声で宗茂は寝言のようなことを呟いた。


「あなたになら、飼われるのも良さそうだ」


十人中十人が息を飲みそうななかなか危険な発言に元就は一瞬手の動きを止めた。宗茂が言うと冗談に聞こえないのだ。けれど、彼をこの手の中に囲っておけるのだとしたらそれはとても魅力的なことだとも思った。どうもこの若く美しい青年に自分は随分と毒されてきているらしい、と元就は自嘲の笑みを浮かべた。


「君を飼うのは大変そうだ」

「そうですか?楽だと思いますが」

「何故?」

「俺は自分の欲求をきちんと言えますから」


ゆるりと開いた宗茂の瞳にはどこか夜を思わせる色が揺らめいていた。どうしたものかと元就は笑う。


「それで、今の君の欲求は?」


少しの熱と甘さを帯びた瞳に誘われるように問うと、宗茂の手が伸ばされ一気に顔と顔が近づく。今にも唇が触れそうな距離だった。


「さわってください」


間近で瞬く瞳に吸い込まれそうだと思った。宗茂の望むままに、否、それ以上に彼に触れる自分が脳裏で容易に想像できた。


「発情期なのかな?」

「ええ、つい今し方から」


まるで元就の反応を楽しもうとしているかのような言葉と表情だった。宗茂は単に自分の言葉一つでこちらがどう動くのかが見たいだけなのだ。挑発のようなそれに素直に乗ってやるのも悪くはないが生憎こんな昼日中から色事に耽るほど若くもなかった。
今にも触れそうな唇ではなく、額に口づけると、宗茂はくすりと笑みを浮かべた。こういった対応も予想の一つだったのかもしれない。


「今は、これでいいかな?」

「嫌だと言ったら?」

「そうだね…わがままはいけないよ、と叱ってみようか」


叱る気など微塵もなかったが戯れの一環としてそう言ってみると、宗茂は困ったな、なんて言うが顔は少しも困ってはいなかった。


「わがままな猫は嫌いですか?」


暗にわがままな自分は嫌かと、そう言っているのは明白だった。だが、嫌だったら彼とこんなふうに付き合ったりしてはいない。
そもそも宗茂は最初からそういう生き物であると元就は認識していた。わがままというのとは少し違う気もするが自由気ままで何事も自分のしたいようにする、そういう人間なのだ、宗茂は。考えてみればそんな気風は猫にとてもよく似ている。


「いや、わがままな猫も好きだよ」

「それは、よかった」


にこりと笑って宗茂はぺろりと元就の唇を舐めた。その仕草は猫そのものといった様子で性的なものを全く感じさせなかった。
驚きはしたが猫とはそういう生き物だと思えば可愛いものだった。甘えたいから甘える、猫も、宗茂も、それでいいのだ。


「本当に、可愛い子だよ、君は」


頭を撫でてやると宗茂は気持ちよさそうに目を細めた。





これがよく晴れた日の日常である。













あなたになら飼われてもいい、を言わせたいがための文。これが清正相手だったら間違いなくむねしげが清正を飼う発言をしそうです。

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