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嗜み
バルハル←ヴィリ前提、某所で内藤さんによるバルカさん鍋コゲコゲ事件の勝手に続編



「ねえ」
「何だ」
鍋をたわしで擦りながらだった。隣の男は上着を脱ぎ、腕まくりをしている。
「どうやったら煮物ここまで焦げ付くの」
「……俺が教えてほしい」
いつもなら無視するが、明確に自分が生み出した惨状の前では強く出られない。銀髪の男はパチリと瞬きを一つして、口を開いた。
「珍しいな」
「うるさい」
「はいはい。多分味付けが濃すぎるんだよ。煮汁が濃いと焦げ付きやすいし、あとは間違いなく火にかけすぎなんだろ」
「……料理、できるのか」
「たしなみです」
ふふん、と言い切った男は、それから慌てて付け足した。
「言っとくけど君のためじゃないからね!君がハルに変なもの食べさせないか心配してるだけなんだからな!」
「うるさい、次は失敗しない!」
「お前たちふたりともがうるさい」
ゴッ、と後ろから首根っこを掴まれ、衝撃が走る。あまりの痛みにその場でうずくまる。
「ら、ライト…」
「なに…するの…」
うめきながら見上げた先には双子の妹が仁王立ちしていた。
「くつろごうと思ったが飲み物を忘れてな。取りに来たら後片付けを放り出して怒鳴り合うお前たちを発見したというわけだ」
「だからって」
「あ、これはいいな。セラが淹れていたアイスティーだ」
未だ頭を抱えて呻く俺たちをよそに冷蔵庫を探る妹。
「待たせたな、良いものがあったぞ」
視線の先にはハルがいた。
「あの…いいんですか?」
「どうということはない。いつもだ」
「はあ…」
「どちらかというとハルに看病してほしくて痛い振りをしているんだな。そうすれば鍋を放り出せる」
そんなことは考えていな…いや、姿を見て少し思ったかもしれないが!
「それはダメです」
きっぱりとハルが言い切る。待ってくれ、誤解だ。下心はないとは言い切れないが。
「後片付けはちゃんとしなきゃダメです。いいですか、この洗剤はよく落ちるから手袋をして擦ればすぐできます。頑張ってください」
手を握られる。手袋と共に。
「ヴィリ君の方が後片付けにも慣れてると思うので、手伝って上げてください」
こちらは洗剤付きだった。
「じゃあ今度こそくつろぐとするか。飲み終わる頃には鍋も綺麗になっているだろう」
「そうですね!」
妹がハルの背を押す。
「頑張れよ」
扉が閉まった。
「……あのアイスティー、俺がハルと飲もうと思ってセラに淹れてもらった奴」
「阻止万歳」
とりあえず、隣の足を踏んでおいた。

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あきゅろす。
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