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ふらふら
がしゃん。
表で何か倒れる音がした。
「何でしょう?ちょっと見てきます」
「いや、私が行く」
遅くないとはいえ夜だ。妹を制し玄関へ向かう。

「……誰かいるのか?」
人の気配がするが暗がりでよく見えない。鉢植えが一つ転がっていた。先ほどの音はこれだろう。割れていなくて良かった。
ふらりと影が動いた。
「何、」
意外に素早く距離を詰められる。体にぶつかり声にならない呻きを立てるのは、
「……!!!」
「ヴィリ君どうしたんですか?」
従弟だった。

ハルが玄関の明かりをつけたので様子を見ると、どうもおかしい。
「ヴィリ、体調でも悪いのか」
しがみつかれているため後頭部しか見えないのだが、呼吸が荒い。心なしか熱い気がする。風邪でもひいたのだろうか。
「顔赤いですよ?汗もかいてるし。熱があるんじゃないですか」
ハルも声をかける。
「〜〜!!」
何か言ったようだ。
「ヴィリ、とりあえず上がってくれ。体調が悪いなら休まなければ」
うつむいたきりだった顔がようやく上がる。
白に近い銀髪が照らされる。上気した頬、薄く汗ばんだ額、潤んだ瞳。
……いやいや。ここにいるのは従弟だぞ。しかも自分とほぼ同じ顔をした。
と自らに言い聞かせているあたりが落ち着いていないのだが、ともかくこれまた赤い唇が動く。
「……モコモコ」
「もこもこ?」
復唱する。ちょうどよく庭から羊がやってきた。ハルが抱える。

「モコモコミルクソーダ……!!!」

モコモコミルクソーダを3本一気飲みしたあと、4本目に口をつけながらヴィリは言った。
「ナバート大尉をご飯に誘うならハラペーニョフルコースです。ハバネロでもいいと思います。頑張ってください」
未だ赤い顔で手を握られ励まされ、辛いものは苦手だと言うに言えなかった。

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あきゅろす。
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