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いぬいぬ。
てのひらの内藤さんの「犬の恩返し」の設定をお借りしました。


リンドブルムから自宅に持ち帰る荷物があまりに多く、転送もできないものだったためにリグディを使うことにしたのだ。
道々雑談もする。
「へえ、犬飼い始めたんですか」
「ああ。帰ると玄関で待っていてくれる。名前は……待て、扉を開ける」
コードを打ち込み、自室のドアが軽い音と共に開く。
その瞬間、荷物を残し副官が消えた。
「ローッシュー!」
いや、消えていない。
「なんだよお前いきなり消えやがってこんなとこいたのかよさっさと声かければいいじゃんそれにしても縮んじまって」
先日同居を始めた子犬…と言うべきか、副官は彼をもみくちゃにしていた。
「ヤーグに何をする!」
がぶ!
「いってえ!」
私が叫ぶのと、子犬が副官に噛みつくのとはほぼ同時だった。
「やめないか!」
聞き覚えのない声が響いた。
そしてさらに一瞬後、副官に抱きつかれているのは銀髪の青年だった。
ごきっ。
ああ今いい音がした。リグディの顎に青年が一発決めたのだ。
「何すんだよ痛いじゃねえか!」
「殴られるようなことをするな!」
完全に取り残されてしまった。
副官と怒鳴り合っている見知らぬ青年……いや、私は彼を知っている。子犬なのだから子供の姿なのだと思っていたのだが。
「……ヤーグ?」
「は、はい!」
「あ、隊長の家だったか」
やはり忘れられていた。
「あー……、知り合いかね?」
例えば突然成長した姿だとか、色々聞きたいことはあったのだが、とりあえずひとつ尋ねてみる。
「うう、これは…その…」
「これって言うな。いやー知り合いってか親戚ってか」
「親戚?」
ぼふん。
間の抜ける音が響けば、そこには鳶色の毛並みをした犬がいた。
「なっ…」
「リグディ!」
ぽふん。
もう一度音がすると、そこにはいつも通りの副官がいた。
「百聞は一見にしかずって言うでしょ」
何故か得意気な副官を前にして、そのうち私も猫にでもなってしまうような気がした。


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あきゅろす。
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