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のまれるな(一萬打御礼内藤御簾戸様へ)(後半R18)
6月末、学期末の考査が終わると士官学校は2ヶ月間の長期休暇に入る。大抵の者は実家に帰省するが、諸々の理由での寮に残る者もいた。リグディは後者で、理由は飛空艇のシミュレーターを使うため。
しかしそんな熱心さも息抜きをしなければ続かない。というわけでリグディは同じく寮に居残っていた同室のロッシュと酒盛りをすることにした。
非常に渋っていたのだが量販店でとある缶飲料を味見させると大人しくなった。気に入ったらしい。
寮に戻りぐだぐだと酒を飲み続けること数時間、リグディは手洗いに立ち、席を外した。
「なあロッシュ、俺の髪紐の予備知らねえ?洗面台の奥に落としちまって、」
「……ん。髪?」
空気が止まった。やれ物をこぼすな、箸置きを使えだのうるさく、おまけに味見させたモコモコミルクソーダをダースで購入して飲み続けていた(酒盛りって言っただろ!)お堅いルームメイトはどこへ行った。
夏だ。暑いからと緩めた襟元、覗く鎖骨までもが何かの罠に見える。濡れた唇、上気した頬、潤んだ紫紺の瞳。
……待て待て。これは男だ。いくら色が白かろうが背丈の割に細かろうが酔っぱらった男。少々悔しいが自分よりも背が高く、おまけにまだじりじりと伸びているらしい。うん、俺はきれいなお姉さんが好き。今目の前にいるのは男だから興味ないぜ!
リグディが内心必死に言い訳をしていると、舌足らずな口調で言葉が続いた。
「これ、使えば、良い」
ゆっくりと手が上げられる。
ばさり、と髪が落ちた。
「あ、」
グラスを手にしたままだったため、ロッシュが頭を傾け、ついでにふらふらとする体も傾いたために、乳白色の液体を胸元にこぼすことになった。すぐにグラスを戻せば被害は少なかったはずなのだが、どうにも彼の頭は回っていないらしく、片手に角度の付いたグラス、逆の手に髪紐を握りしめて固まっていた。
「……つめたい」
「グラス置けよ、こぼれっぱなしだぞ」
言いつつ非常にゆっくりとしか動かない手から原因をうばいとる。どう考えても酒だ。薄くアルコールのにおいが立ちのぼるグラスを味見する。
「俺のモコモコミルクソーダを」
「そこかよ!」
うっかり叫んでしまった。
律義に缶から移し替えて飲んだは良いがおそらくリグディが飲み乾したグラスに残ったアルコールに酔っただとかそんなところだろう。
「お前ダースで買ったからまだまだあるだろ、明日飲めよ。いいからそのシャツ脱いじまって、」
リグディは自らの世話焼きの部分を激しく後悔することになった。
「……寝ろ!」
もごもごと言いつのるルームメイトをベッドに押し込む。規則正しい寝息が聞こえ始め、リグディはシャワールームに行くべきか真剣に検討した。
素直に服を脱いでいたためにさらされた白さだとか、あまつさえ落ちた髪や濡れた肌にうっかりしそうになっただなんて、諸々すべては酒のせいだ。






息苦しい。
夏の夜の寝苦しさとはまた別の感覚にリグディは目を開けた。
「……ロッシュ?」
暗い室内で銀髪が常夜灯の光を反射している。紫の瞳が細められるのを見て、ようやくルームメイトにのしかかられているのだと理解した。
「あー……わり、こっちお前のベッドだな」
酒盛りでつぶれたロッシュをベッドに押し込んだが、それはリグディ自身のものだったため、ロッシュのベッドを占拠することにしたのだ。別に謝ることではないのだが、普段から几帳面なだけに自分のベッドにこだわりがあるのかもしれない。
「かわる、か……?」
ゆっくりとロッシュの体が倒れてくる。返事も聞かずに意識を飛ばすほど眠かったのか、と思ったのもつかの間、触れた感触にリグディの眠気は一気に消え去った。
「お前、」
聞こえないのか、そもそも聞く気がないのか。偶然ではなく唇が重ねられる。最初こそ頭が真っ白になったが、技巧も何もぐいぐいと押し付けるだけの行為に冷静さが戻り、ついでに悪戯心が湧いた。
わずかに離れたとき、逆に頭を引き寄せて唇を舐める。驚いたのか起き上がろうとする体をとらえ、舌を入れる。歯列をなぞる。わずかに甘い。
「――ッ」
押し返そうとしたのだろう、逆に舌を強く絡めることになり苦しげな声が聞こえた。そのすきに体を入れ替える。
今度はリグディが上になり、深く口づける。
ようやく解放されてせき込むロッシュの、顔に落ちた髪をかきあげてぞくりとした。薄く涙の膜が張った紫紺の瞳。滲むだけでなく、溢れさせたら、どうなる?
おいたはだめよ、おとなしくねんねしな、手間かけさせやがってよ。
いつものように軽口を叩いて、酔いの上での悪ふざけで片付けようとしていた意識はどこかへ消えていた。
嗜虐心がそそられる。
「嫌なら言えよ。でないとやめない」
「い、や……?」
眠気か酔いか、それともさきほどのわずかな行為でか、どこか夢を見ているような瞳に軽く音をたててキスをした。

仰向けで肩を押さえれば骨格の都合で起き上がることはできない。結ばれていない髪をかきわけ、耳朶を、首筋をたどる。知識はあるが男を抱いたことはない。もともとボタンを留めていなかったシャツの袖を抜かせ、脇腹に手を伸ばしたあたりで組み敷いた体がびくりとすくみ、女とおなじでいいのだと安心した。
「……ん、」
熱があがるにつれ声が漏れる。胸を執拗に弄っていると焦れたのか髪を掴まれた。
「痛いっての」
簡単に腕をとらえキスをすると大人しくなる。多分好きなのだろう。一度体を起こすと、常夜灯に浮かんだ肌の白さに異常に興奮した。痕をつけ、そのまま臍のあたりまで下りていく。ベルトを引きぬき、下着ごと一気に下ろす。下肢は一度も触れられていないのに反応していて、自分の手でこうなったと思えば何かが満たされる感覚と、そしてまだまだ足りないと叫ぶ感覚両方がこみ上げて、きっと今なら顔だけで捕まるな、といささか場違いな感想がよぎった。
「ひっ!」
甲高い声があがる。
「イイんだ?」
自分のモノ以外に触る日が来るとは思っていなかったがためらいなく握りこみ、その瞬間の反応の良さに口角がつりあがる。男だからわかることもいろいろある。
「あ、あぁ、あ、や、だ」
「嫌?うそだろ」
筋に沿って指を添えればあっさりと反応をかえす。あれやったらどうなんのかな。思いついて、そのまま行動に移していた。
「や!」
熱い。口の中で何か別の生き物のようにはねる。二度、三度くちびるでしごけばあっという間に追い詰められて苦味がまじる。直前、顔を離して手で受けたそれを腹と内腿に塗りつけて、残した痕の赤と白の対比にまた笑みが深くなる。
放心状態のところへまたキスをして、ぱちりと瞬いた拍子にこぼれた涙を舐めとった。
「俺も、良くしてくれるよな?」

何かで濡らさなければ悲惨なことになる。さきほどのモノだけではきっと足りない。
ふと目に付いたのはグラスに注がれて放置された白い液体。狭い部屋だ。テーブルはベッドの上からでも手を伸ばせば届く。いつも出したものはすぐさま片付けろとうるさいのに、とそこまで考えて笑いが漏れた。少し視線を逸らしただけでこちらに手を伸ばしてくる様が可愛らしい、と思った自分はまともな思考などとうに手放しているのだろう。
「お前が片付ければいいよな」
グラスに指を浸し、そのまま赤く腫れたくちびるに触れる。
一瞬顔を背けられるが、無理にこじ開けるとゆるゆると舌を這わせてきた。味見してすぐ、ダースで買いこむほど気に入った飲料だからか、熱心に音を立てて舐める、その水音と感触に煽られる。指がふやけるほどになってから引き抜き、後ろに手を伸ばす。さすがに身じろがれた。べたべたとした指をあてがう。一本だけでもかなりきつくて、入口をゆるゆると探る。
「力抜けよ」
無理だ、と言いたいのだろう首が振られる。髪が音を立てる。
「じゃあこっち」
「んん!」
また下肢に手を伸ばす。握りこんだ途端力が抜けて、その隙に二本目を入れ動かす。ある個所に触れた瞬間、高い声とともに体がはねた。
「ここか」
三本目を入れてさらに攻める。ぼろぼろと零れおちる涙を舐めとり、足を抱えた。
明日の朝、顔を合わせて何をどうするのだと頭の片隅で声がするが止められない。止めたくない。プライマリーのような片恋をして、いちいち赤面する男を喘がせて、啼かせたい。
腰を掴んで、てのひらに当たった骨の感触に何かが震えた。


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あきゅろす。
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