[携帯モード] [URL送信]

NR
ロリッシュ
ロッシュがロリータです。つまりは女子で子供です。略してロリッシュ。
そういうわけでシド×ロリッシュです。




「顔を上げれば良いのに」
両親をなくし、私は遠い親戚だという男に引き取られた。
「それにカーテンを開ければ良いのでは?暗いと気が滅入る」
「お気遣いなく。レインズ卿」
「シドだよ。そう呼んでくれと言っただろう」
「……卿は卿です」
溜め息が聞こえた。
下を向いてにこりともしない小娘など話していて楽しい存在ではないだろう。
「そう。では今日はいい。お茶にしよう」
合図をすると執事がワゴンを押し、入ってきた。メイドがテーブルを整え、椅子を引く。
席に着き、紅茶が注がれる。
「髪を結えばいい」
時々髪をかき揚げる私の仕草を見かねたのだろう、彼が声をかける。
「いえ、このままで」
「邪魔にみえるよ。それに窓を開けてもいいかな。風を入れよう」
窓を開ける。そんなことをしたら光が入る。執事は私の内心など知るはずもなく、命じられるままカーテンに近づく。
手が伸びて私の髪に触れる。
「リボンを」
メイドが櫛とリボンを差し出す。
嫌だ。
前髪を上げられて私はパニックになった。
音を立てて立ち上がる。茶器が傾き、レインズの服を汚した。
「おや」
彼が声を上げたことで頭が冷えた。どうしよう、私の後見人なのだ。失礼をしてはいけないのに。
「片付けてくれ」
彼は特に怒った様子もなく、メイドに命じ、手を動かし続ける。動けなくなった私を不審に思ったか、彼が首を傾げたが、都合良くもあったのだろう、そのまま髪が結ばれていく。
座るように促されて、私は人形のようにぎくしゃくと腰を下ろした。
「開けてくれ」
彼が窓へ向き直る。
そうだ、窓を開けると言っていたのだ。
待って。まだ見たくない。そしてあなたに見てほしくない。見てしまえばあなたは私を、

光が差し込んだ。

「どうかな。この方が可愛いと思う」
姿見を前に据えられる。
午後の光に照らされた私。鏡越しに目を合わせる彼は軽く笑みを浮かべている。見たくないと思っていたものは、直視してみればなんということもない白い筋だった。
「……不思議な気分です」
「そう?」
「人に会うのも鏡を見るのも、明るいところにいるのさえ嫌だったのに、私は今ここに座っています」
「……今も嫌かね」
「いいえ。どうというものではありませんね。あなたの言うとおり、顔を上げて良かった」
くすりと笑う気配がする。
「傷跡を見る度に私は両親を思い出します」
暴走した馬車に巻き込まれて両親が死んだとき、私も怪我をした。残ったのは雀の涙ほどの遺産と爵位と、額の傷。
彼が息を飲む。
「すまない」
「今日からは、あなたのことも思うでしょう。顔を上げ、前を見て進めるようにしてくださった」
鏡越しから向き直り、直接目を合わせる。
「シド。ありがとうございます」
「……どう、いたしまして」
「お茶にしましょう。用意してくださったのに、放り出してしまいました」
「君を尊敬するよ、リトル・レディ」
「…え?尊敬って、そんな」
戸惑う私に、一瞬柔らかい感触。
「卿!?」
「シドだよ。そう呼んでくれるのだろう」
吹き込む風が私のリボンを揺らす。
「でも、今の……シド!?」


[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!