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執事ロッシュ3
「お帰りなさいませ、ご主人様(マイ ロード)」
「リグディ。あれはなんだ」
帰宅するなりレインズはリグディに詰め寄った。
「あれ?」
「しらばっくれるな」
レインズは自らの首筋を指す。
「ああ。ご覧になりたいだろうと思って」
リグディは頷く。視線の先にいるのは、先ほどレインズの外套を受け取り、今またジルの襟巻を持っているロッシュだ。
「でも見えないようにつけたつもりでしたけど?」
「私の背を考えろ。充分見えるとも」
襟に隠れるぎりぎりの場所。普通見えないが、上から覗き込めば話は別だ。
「なるほど。……あ、奥方様も気づかれたみたいですね」
ほどけた靴紐を結び直させていたジルの表情が変わる。
「ジルより先に目にしたことで良しとするか」
「ほどほどに。ロッシュは真剣にお二人の仲を心配してます」
「今更だろうに…まぁ彼が晩餐の給仕をするなら考えないでもない」
「それ結局俺があいつの分も全部仕事する羽目になるんですけど」
「不満か」
「お暇を頂くよりはだいぶん良いですね」
「ではそのように」
「イエス、マイ ロード」
慇懃に頭を下げ、給仕の手配のため主餐室へ向かう。途中いつもの癖でタイを緩めかけ、手を止める。朝から綺麗に結ばれたままのタイ。これを目にする度にロッシュが慌てて視線を逸らすのが愉快でたまらない。あと数日は息苦しさを我慢しようとリグディは決意した。

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