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執事ロッシュ2
「お疲れ」
「み…見ていたなら助けないか…」
「無理無理。それに俺まで参加したら支度間に合わねえもん」
主人夫婦の魔手をやっとのことで逃れたロッシュの姿は、髪は下ろされシャツのボタンがすべてはずされていた。そこまでしつつもリグディの手を借り朝の支度を完璧に整えて出て行った彼らに拍手を贈るべきか、とにもかくにもキスマークはつけさせなかったロッシュを賞賛するべきか。
「俺がいなければお二人とももう少し仲良くして下さるのだろうか…」
「やーもっと無理なんじゃねえ?あとどっちか一人でもストッパーがいなくなるだけからお前が遊ばれるのは変わんねえよ」
「……」
ロッシュは深く溜め息をついた。はずされたボタンを中ほどまで留めたところで、目の前の男の襟元に目が向く。
「リグディ」
「ん?」
グラスを拭いていたリグディは手を止めた。
「タイを締めろ」
「えー。苦しいからやだ」
「我が儘を言うな、身嗜みを調えるのは使用人の義務だ」
「また義務とか堅いことばっか言って」
「お前がだらしないだけだ。こちらを向け、締めてやる」
「はいはい」
衣擦れの音ともに細幅の布が結ばれていく。
「苦しいんだけど」
「これが標準だ。今日はこのまま緩めるな」
「お前も」
リグディのタイはきちんと結ばれたが、当のロッシュはまだボタンすら半端なままだ。手が伸ばされる。
「…ああ」
「やってやるよ」
「自分でできる」
「んー、お礼」
リグディの手がロッシュの襟を掴み、
次の瞬間壁に押しつけられていた。
「何を……!」
ロッシュが抵抗する間もなくリグディが距離を詰め、
「……ッ!」
首筋に微かな痛みが走った。
「目立つな。さすがご主人様(マスター)、見立ては完璧」
呆然とするロッシュのボタンを留め、嫌になるような美しさでタイを結ばれた。
「髪は自分でやれよ」
それだけ言い残してリグディは身を翻す。
グラスを載せたワゴンが遠ざかる音がして、ロッシュはずるずると座り込んだ。


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あきゅろす。
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