[携帯モード] [URL送信]

小説
岐路(ほぼライトニング)
私はファロン一等兵、通称ライトニング。
ボーダム警備軍所属だが、下士官昇格試験のためこれからしばらく騎兵隊に入隊することになった。今日はその初日だ。滑走路で飛空艇の到着を待っている。


「よーうライトニング緊張してるかー」
「……いえ、特には。アモダ曹長も全くしてなさそうですね」
「はは、わかるか!実はたのしみなことがあってな」
「そうですか」
いつもどおり返事をすると微妙に眉根を寄せられた。
「お前さん腕はいいんだが愛想が足らんなぁ。ほら笑顔の練習!」
にか、と歯を見せて笑顔を向けられる。
「…はい」
僅かに笑えた、かもしれない。
「よし、気合い入れて行ってこい。……ご到着だな」
ボーダムの抜けるように青い空と海を背景に、騎兵隊母艦リンドブルムが着陸するところだった。


「ようアモダ!」
「久しぶりだな!ライトニング、こいつがリンドブルムの先任曹長だ。あと俺の同期な」
「ファロン一等兵です。ライトニングとお呼びください。よろしくご指導願います」
「こっちこそよろしくな」
「固くなるなよ。研修ってもちょっと異動して雑用係りに配属されるようなもんだからな。」
「そうだぜ、でもお前さん優秀って聞いたからそのまま転属でも歓迎だ」
「おいおい困るぞ、こいつはボーダム期待の星なんだからな」
「ふふんせいぜい研修期間中やきもきしてろよ。…そろそろ時間だ。行くか」
「はっ。行って参ります」
敬礼する。アモダ曹長も答礼する。
タラップをあがる。
「ようこそ、警備軍広域即応旅団、騎兵隊へ」


期待と不安を抱えて艦に乗り込み、多少ノリが軽いが気のいい先任曹長と古参兵たちに挨拶をした。そこまでは普通だったのだ。いや、設備の素晴らしさ、それらを維持する技術力を目の当たりにして、感動し、さらに彼らをまとめる隊長にも憧れた。
だが、どうして一等兵の私が艦橋配置になっているのだろう。そして何より、何故私は最年少将官の誉れも高い騎兵隊隊長とその副官がプライマリーの児童でもしないような悪口合戦の終わりを待たなければならないのだろう。

「ヒゲ!」
「うるさい童顔!」
「言ったな癖毛!」
「黙れこれはセットしてんだ!」
襟をつかみ合ってののしりあう二人のちょうど真ん中を何かが横切った。
「手が滑りました申し訳ないお怪我はありませんか」
わぁ棒読みってこうするんだ!艦橋一同の心の声大合唱。
支給の軍刀が艦長席に刺さっている。
「……ない」
「……俺も」
隊長と副官はぴたりと口を閉じた。
「それは良かった。ところで隊長」
「……何だね」
「こちらの書類にサインをいただけますか」
「ボーダム警備軍宛て、今日締め切り。地上締めだとあと15分か。急だな」
「乗艦してご挨拶に伺ったらすぐ転送するはずの書類でしたので」
「……今すぐサインする」


それからあのふたりが喧嘩するたびに私が呼ばれるようになったんだが、なあセラ、私はどこで間違ったんだと思う?


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!