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小説
マイクより
おはようございます、警備軍騎兵隊副官リグディ大尉です。本日はPSYCOM選抜部隊合同演習を予定しています。只今マイクのテスト中、音声不備があれば直ちに申し出るように……
ってやってられっか!こんなの副官の仕事じゃねえよオペレーターにやらせろよこの童顔准将が!
「やぁ副官が失礼したね諸君、彼はどうやら新人一等兵のファロン君がお茶にクッキーをつけてくれなかったと拗ねているようだよはっはっは」
拗ねてねえよ大体あんたが食ってるクッキーはファロンが出したんじゃなく私物だろうがしかも俺が買ってきた奴!
「いちいち細かいことを気にするな、さっさとマイクテストを終わらせたまえ」
細かくねえよ食い物の恨みはバハムート級だっての!
あーマイクテストな、演習用に取り繕ってたけどもういつもどおりでいいよな。音聞こえない奴いたら今すぐ工兵に言え。んじゃ次時計合わせ、只今午前8時34分15秒、演習開始は0900(マルキューマルマル)、5分前に艦の前に整列完了。
準備出来たらとっとと動けよ。

「おーしマイクテスト完了、と。おいファロン、お前も準備しろよ」
「ライトニングです。準備はできましたが、あの…大尉…」
数日前から騎兵隊に乗り込んでいる女性兵士が口ごもる。
「あぁ?報告は明瞭簡潔に、これ基本な」
「申し訳ありません、以後気をつけます。大尉、クッキーが」
「クッキーだぁ?…っちょ、てめえなに食い尽くしてんだ!」
ファロン…もといライトニングが示した先には、空になったクッキー缶と艦長の姿。
「美味いな」
「言うことはそれだけかこの野郎!」
「もっと食べたい」
「墜落しやがれ!」
「お前も道連れだな」
「一人で墜ちろ、俺にクッキー残してから!」
「経費で買ってやる」
「収支報告書に何て書きゃいいんだよ作成俺だぞ」
「正直に書きたまえ、リグディ大尉の我が儘でこだわりのクッキー購入、と」
「マジふざけんなよ監査担当総出でツッコミくらうに決まってんだろうが」
真剣に話がそれた頃一発の銃声が艦橋に響いた。
「ご歓談中申し訳ありません。おふたりとも」
ライトニングだ。先ほどの銃弾は問題のクッキー缶に命中していた。
「5分前です」
「げっ」
「つけ加えるなら」
「なんだね」
「艦内マイクのスイッチが入ったままです」
「私の威厳が」
「私がスイッチを動かして艦外まで放送を響くようにするか、さっさと整列するかお選びください、サー」
「上官を脅すのかね」
僅かに抵抗を試みる艦長。
「まさか。警備軍が誇る騎兵隊の勇姿を、演習であってもPSYCOMに見せつけたいだけです。ところで大尉」
「俺?!」
「ご所望のクッキーはボーダム特産です。整列していただけるなら割安で購入できるアカウントを転送いたします」
乗艦して数日、にこりともしなかった一等兵の満面の笑みがとても恐ろしい。
「「……整列します」」
艦長と副官は揃って返事をした。

その日の演習は滞りなく行われ、後日ボーダムには大量のクッキーが注文されたという。



艦内の会話
マイク最後まで入ったままだったな!
どんだけ美味いんだあのクッキー。俺も注文しよう
あっ俺の分も頼む
よーしみんなで頼んで経費に計上してもらおうぜ!

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あきゅろす。
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