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小説
whisker(拍手log)
私はファロン一等兵、通称ライトニング。只今騎兵隊にて研修中。隊長護衛…と言っても母艦リンドブルム内で危険などまずなく、秘書のような任務を務めている。
「ファロン君」
「イエス、サー。ライトニングとお呼びください」
隊長が話し始めた。一時的であっても隊員としては傾聴すべきだろう。…本来なら。
彼の視線は副官に集中している。またろくでもないことを考えて手が止まっているのだ。
「ライトにゃっ゛」
「ここにネコはいませんよ。お茶をどうぞ」
「ライト、ニング、君」
お茶を飲み干し彼は息をついた。舌を噛んだらしい。
「はい」
「実は私は年より若く見られることが多くて」
「左様ですか」
「しかしリグディ大尉は年より上に見られるという。この差はなんだろうか。私は考えた」
当の大尉は艦橋の隅で飛空竜騎兵の新装備モデルをいじっている。とても幸せそうだが、おそらくマネキンを逆立ちさせる意味はない。
「ヒゲだ」
「ヒゲ」
復唱する。ヒゲがどうした。
「彼はヒゲを生やしている。私にはない。手始めに短期休暇中ヒゲを伸ばしてみた」
「いかがでしたか」
「失敗だった。私は伸ばしても見苦しいだけだ」
大尉は逆立ちマネキンとダンスを始めた。
「そこで考えた。いつも隣にいる大尉のヒゲを剃ってしまえばいいのではなかろうか。そうすると彼は若く見えるし、相対的に私も年嵩に見える。おそらく威厳も増す。どう思う、ライトニング君」
ベルトキットを蝶結びにする大尉を横目に、隊長に向き直る。
「僭越ながら申し上げますと」
「うむ」
「お二人とも子供っぽいおっさんです」
「おっさ…私ははじめておっさんと言われた…」
「父が生きていればお二人と変わらない年でしたので」
「!!!」
「失礼、カップを片付けます」

「お前のせいだ!」
「いきなり何ですか?!」
哀れな姿にされたマネキンを挟み、喧嘩が始まったようだがもう知るものか。


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