小説 いつもどおり 「あんたまたバカやってんすか」 リグディが溜め息混じりにつぶやけば、バカを冒したかもしれない人物が振り向いた。 「バカとはひどいな。仮にも上官に向かってなんたる口のききかただ」 そう言いつつ当の上官―レインズ准将の口の端は上げられている。 「今更懲罰でも何でもいいですけどね。ルシ、なんておとぎ話言い出す奴乗せるってのはどうにも気に食わねえ」 不満も露わに言い立てるとレインズはくすりと笑みを深くした。 「怖いのか」 「はぁ?!」 聞き捨てならない。 「では嫉妬か」 「あんたふざけんのもいい加減にしろよ」 「ふざけてなどいないさ。これは賭けだ。…お前を拾ったときが最大の賭け、勝った私が他の勝負で負けるわけがないだろう」 こちらに体を向けて目を合わせ、にこりと笑う。これだから。これだから、この男は―自分は。 「…だからあんたバカだってんですよ」 ぐしゃぐしゃと髪をかき回し、目をそらしてわき上がる嬉しさ、誇らしさをかみころす。どうせバレているのだろうけれど。 「リグディ大尉、任務だ」 「はっ」 敬礼する。 「下界のルシ4名を送迎艇に乗せ、聖府軍旗艦パラメキアに突入せよ」 「サー、イエスサー」 俺を信じてくれるなら、俺もあんたをどこまでも信じるさ。 [次へ#] [戻る] |