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妄想圏外区域
B


一気に覚醒した意識。

目を開けると見えてきたのは母さんではなく吸血鬼。

え、まさか、そんな。

吸血鬼に母さんを重ねていただなんて、そんな馬鹿なこと。


「あっ……、有り得ない有り得ない有り得ないっ!」

「へぶっ!」


吸血鬼の手を押さえていた左手をグーに固めて鳩尾に一直線。

痛がったのは一瞬。どうせすぐ回復していつものようにセクハラ紛いの言動をしてくるに違いない。


「よかった…。これだけの元気があれば大丈夫だね。熱もさっきより大分引いてきたし、この調子なら明日には治りそうかな」


…そう、思ったのに。

本当に、心の底からホッとしたような、母さんと同じ微笑みを浮かべてそんなことを言うもんだから。


「っ……」


見ていられなくなって目を背けた。

駄目だ、騙されちゃ駄目だ。

こいつは吸血鬼。母さんと父さんを殺した吸血鬼の仲間。たとえ吸血鬼らしくなくてもその事実は変わらない。

だからたかだかこんなことで流されちゃ、駄目なんだ。


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あきゅろす。
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