[通常モード] [URL送信]

妄想圏外区域
A


「な、何っ!?」


降ってくるガラスの破片から逃げるように後ろに下がる。

上を見上げると、ガラスがなくなった窓枠に立っている一つの影があった。


「全くもう…、また派手にやらかしてくれたね。修理するこっちの身にもなってほしいよ」

「っ、吸血鬼…!」


いつの間にか隣に来ていた吸血鬼は、慣れた様子でどこか欝陶しそうに影を見上げている。

その目が若干眠たげだ。…こいつ寝てたな、夜行性の吸血鬼のくせに。


「…てか、また?」

「そう。何度もああやって馬鹿みたいに現れるんだよ。馬鹿は高い所が好きって言うけど本当みたいだね」

「馬鹿馬鹿煩いですよ、そこの異分子!」


無視されるのに耐えかねたのか、ばっ、と飛び降りてきた馬鹿。

眼鏡をかけていてどこか知的な感じがするその馬鹿は、烏色のマントを羽織っていて全体的に黒かった。口元からは鋭い犬歯が覗いている。

そう、まるで。


「吸血鬼…!」


吸血鬼らしくないこいつとは違う、本物の。


.

[*前へ][次へ#]

27/57ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!