妄想圏外区域 A 「な、何っ!?」 降ってくるガラスの破片から逃げるように後ろに下がる。 上を見上げると、ガラスがなくなった窓枠に立っている一つの影があった。 「全くもう…、また派手にやらかしてくれたね。修理するこっちの身にもなってほしいよ」 「っ、吸血鬼…!」 いつの間にか隣に来ていた吸血鬼は、慣れた様子でどこか欝陶しそうに影を見上げている。 その目が若干眠たげだ。…こいつ寝てたな、夜行性の吸血鬼のくせに。 「…てか、また?」 「そう。何度もああやって馬鹿みたいに現れるんだよ。馬鹿は高い所が好きって言うけど本当みたいだね」 「馬鹿馬鹿煩いですよ、そこの異分子!」 無視されるのに耐えかねたのか、ばっ、と飛び降りてきた馬鹿。 眼鏡をかけていてどこか知的な感じがするその馬鹿は、烏色のマントを羽織っていて全体的に黒かった。口元からは鋭い犬歯が覗いている。 そう、まるで。 「吸血鬼…!」 吸血鬼らしくないこいつとは違う、本物の。 . [*前へ][次へ#] |