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妄想圏外区域
E


場所は変わって広々とした客間。

僕と吸血鬼と小鹿…だった鹿男は、それぞれ一人用のソファーに座っていた。

洋服も無駄にある屋敷だから着る物には困らなかったけど、なんというか…鹿男のファッションセンスは個性的だった。うん、敢えてツッコまないでおこう。


「…それで。君は何者なんだい?」

「私は月鹿。月の恵みで人に姿を変えることが出来る不思議な鹿だ」

「…自分で不思議な鹿って言うのもどうかと思うけど」


僕の小さな呟きはどうやら聞こえなかったようで、鹿男もとい月鹿は話を続ける。


「だが、どうもこの力は鹿の間で忌み嫌われているらしくてな。襲われて怪我をしたところをそいつに助けられた。ちょうど月の力が無くなり人の姿になれなかったのだ。さっき月光を浴びたおかげでようやく力が溜まった。…謝辞が遅れたが、本当に感謝している」

「御礼なんていいよ。だからフブキ君の柔肌は近くで見てどんな感じだったか事細かく教え…へぶっ!」

「その口を永遠に閉じろ吸血鬼!」

「お前はフブキというのか?そうだな…触ると弾力がありそうな」

「お前も素直に答えるな馬鹿!…はあ、なんかもうどっと疲れたよ」

「あ、ところで月鹿君。君の名前は何ていうんだい?ちなみに僕はアフロディ。こう見えて一応吸血鬼なんだよ」

「名前はない。フブキの案はあまりに酷すぎて却下した」

「む…、お前の感性おかしいんじゃないの?」


ぼやく僕を余所に、吸血鬼は少し考えた後一つの名前を口にした。


「ガゼル、はどうだろう」

「採用」

「即決!?僕の時はあんなに渋ったのに…!」


なんだか妙な敗北感を感じてしまう。

…というか確かガゼルっていう鹿に似た動物がいたような気がしたけど、言わない方がいいかな。

とにもかくにも。

屋敷に一人、人外の住人が増えました。


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あきゅろす。
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