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妄想圏外区域
A


それでも沈黙を貫いて本のページをぺらりとめくるだけの僕に、吸血鬼は大袈裟な声音でまた何か言い始める。その内容を聞いてやる義理はない。…てか無視されたら心が死ぬって言ったのはどこのどいつだ。

どうでもいいけど、この屋敷の書庫にあった本…超絶的につまらない。苦笑も嘲笑も浮かばない程のつまらなさだ。ある意味凄い。

暫く逆の意味で天才的なその本を読んでいる内に、ふと吸血鬼の声がやんでいることに気付いた。
諦めたか、と思った矢先。


──ぐさっ


嫌な音が響いた。

その音源を見た瞬間、僕は思わず驚愕の声をあげてしまった。


「なっ…!何やってんのお前!」


僕の目に飛び込んできたのは、どこからか取り出したナイフで自分の腕をざっくり切り裂いている吸血鬼の姿。

じわじわと溢れ出す血。あの日の光景がフラッシュバックしそうになるのを必死に堪える。

当の吸血鬼は不思議そうな顔をして、腕から溢れるそれをぺろりと舐めあげた。

そして。


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