妄想圏外区域
B
…全力で腹を殴ってやったというのに、回復力が高い吸血鬼にはあまり効果がなかったようで。
「全くフブキ君は照れ屋さんだね!恥ずかしいなら恥ずかしいって素直に言ってくれればいいのに」
寧ろ逆効果だった。
「煩い黙れ地に還れ。僕に話しかけるな吸血鬼」
「吸血鬼じゃなくてアフロディって呼んでよ。若しくは真名でも構わないよ!契約した時に教えてあげたでしょ?」
確かに頭の中に浮かぶ名前はある。だけど、その名を呼ぶ気は勿論ない。こいつなんて吸血鬼で充分だ。
「吸血鬼は僕個人の名前じゃないよフブキ君!」
「勝手に心読むな。今度やったらお前の存在を僕の記憶から抹消する」
「そんな!フブキ君に無視なんてされたら僕はもう心が死んでしまうよ!分かった、もう勝手に読心はしないよ」
少しは渋るかと思ったけど、あっさり頷いた吸血鬼。
そのことに少々毒気を抜かれながら、僕はキッチンへと向かう。
昨日みたいな激マズ料理は金輪際ごめんだ。
自分の分は自分で作るに越したことはないし。
「あっ、もしかしてフブキ君…。僕のために朝食を」
「作るわけないでしょ。邪魔だから引っ付くな。どっかに消えろ吸血鬼」
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